Categories: 急性期OTの独り言 作業療法(急性期)

感情をコントロールして記憶力を上げる方法

こんにちは。作業療法士のトアルです。

前回・前々回の記事の続きになりますが、人が記憶を定着させるには、
「脳に対して入力された情報が重要である」と教える必要があると説明しました。

↓気になる方は以下の記事をご覧になって下さい↓

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誰でもできる!人に説明するだけの記憶術を教えます - とある作業療法士のブログ

 

「脳に対して入力された情報が重要である」ことを認識させるには2つの条件があります。

「日常的に繰り返し使う」
「感情が動いたのか」になります。

以前の記事では「日常的に繰り返すことで記憶力を上げる方法」について解説したので、
今回は「感情をコントロールして記憶を上げる方法」について解説しようと思います。

感情が動くとどうなるのか

脳は「楽しいとき=快」に「ドーパミン」「エンドルフィン」を放出し、
「不安や恐怖=不快」を感じているときに「ノルアドレナリン」「アドレナリン」を放出します。

これらの物質が放出されると『記憶を増強する効果が高まる』ことが実験で確認されています。

「楽しいとき」が記憶しやすいのには理由があります。
それは、自分がとった行動に対して「利益・報酬」が得られるからです。

「楽しい」と感じる行動パターンを覚えておくと、同じ行動をとることで
再び「利益・報酬」が得られる可能性が高くなるため記憶に残りやすいのです。

逆に「不安」や「恐怖」を感じた場合、似たようなシュチュエーションが起きると
「不利益危険」を回避する方向に働こうとします。

この場合も、「不安」「恐怖」を感じる行動パターンを覚えておくことで、
「不利益・危険」を避けられるが可能性が高くなるため記憶に残りやすくなります。

このように、情動を喚起するような出来事に対する記憶を「情動記憶」といいます。

情動記憶は人の「本能」の部分に働きかけるため圧倒的に記憶に残りやすいのです。

ということは、この「情動記憶」を使い意識的に情動が起こりやすい状況を作り出すことができれば、記憶を定着しやすくなるともいえます。

では、それは具体的にどういった条件なのでしょうか?

 

「適度」な緊張は記憶に最適

その条件とは「適度な緊張状態を作り出す」ことです。
緊張は「過度」ではなく「適度」です。

「不安」や「恐怖」を感じるときに放出される物質は「ノルアドレナリン」や「アドレナリン」であることは先に説明しましたが、これは脳の偏桃体や海馬で他の神経伝達物質と共同して「長期記憶」の形成を促します。

これは実験でも明らかにされており、

「ヤーキーズ・ドットソンの法則」

と呼ばれています。

彼らはネズミにある実験をしました。ネズミに白と黒の目印を判別させる訓練をします。
白と黒の判別を間違えた場合は『電気ショック』を与えていきます。
(少しかわいそうですが…)

そうすると、徐々に正答率が上がっていったそうです。

この研究の結果から、ある程度の緊張状態を与えたとき、適度な緊張は学習効率が上がるのではないかということが示唆されます。

 

緊張感の後に報酬がある

例えば、実習でバイザーに「この事を調べてきて」と新しい課題を出されたとします。
新しい課題というのに直面すると、ストレスになり緊張が高まります。

「この課題を達成できないと実習落ちるかも…」
「バイザーから信頼を失いたくない…」

不安や恐怖心が出てくると思います。

そして、実習に受かりたい思いで頑張って調べてきますよね。

この状況は上のネズミの実験で言えば『電気ショック』を与えられる状況と似ています。
物理的な刺激ではなくても、精神的に刺激が加わっているとも考えられます。

明日までにという期限とバイザーからの依頼ということで緊張しますよね。
なので、参考書をひっくり返したり、ネットで検索したりと頑張って調べます。

頑張って調べてきたことは時間が経っても、記憶に残っているはずです。
これは、私にも経験があります。

このストレスを感じている状況下では、脳の中で「ノルアドレナリン」や「アドレナリン」といった神経伝達物質が放出されていると考えられます。

「課題をやってこなかったら実習に落とされるかも」と危険を察知して、その危険をできるだけ回避しようとするからなんですね。

なんとかかんとか調べ終わり、翌日バイザーに課題を提出します。
そして、頑張ったことを「よく調べてきたね」とバイザーに褒めてもらうとどうでしょう?

うれしくなるはずですよね。

これは「課題が終わった」という達成感「努力が認められた」という自己効用感
他者からの承認欲求が満たされたためで「利益・報酬」が得られた状態と考えられます。

このときの脳は「ドーパミン」や「エンドルフィン」が放出されていて、
調べてきた課題の内容が記憶として定着している状況にあるのではないかと考えられます。

まとめ

「今までやったことのない新しい課題」はできたら避けたいものです。

なぜなら、今までやったことがないため「不安」「恐怖」の感情が伴うためです。

しかし、「適度な緊張」は「ノルアドレナリン」などの放出を促して、長期記憶の形成を促すことを説明しました。

そして、やり遂げた後に褒められると達成感や自己効用感、他者からの承認欲求を満たします。

これは脳の中で「ドーパミン」「エンドルフィン」が作用しているものと考えられます。
そうすると、さらに記憶が定着しやすくなるはずです。

脳内物質の働きを知り「感情を動かすことで記憶できる」このことを知っておくだけでも
「新しい課題」にも取り組みやすくなるのではないでしょうか?

この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。

toaru

急性期病院で働いている、臨床5年目の作業療法士です。作業療法士に役立つ情報を発信していきます。

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