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過剰なリハビリで筋力低下が起こる理由とその対応

 

こんにちは。作業療法士のトアルです。

近年、注目を集めている「サルコペニア」と呼ばれる病気。
急速な人口増加により、医療従事者には無視できないキーワードになっています。

「サルコペニア」とは「筋肉の老化」のことです。

筋肉が老化するということは、単純に「筋力訓練」をすればいいのでしょうか?
実は単純に筋力訓練をししていても筋力の改善は難しいのです。

「リハビリをしているから大丈夫」そう思い込んでいる患者さんも多いと思います。
ですが、それだけでは不十分なのです。

やりすぎて筋力が落ちてしまうというケースもあるんですね。

そして、もう一つ大切なことがあります。

それは「食事」です。

食事でしっかり栄養を取っていないと、筋力が付くどころか落ちていきます。

そこで今回は「過剰なリハビリで筋力低下が起こる理由とその対応方法」について
解説させていただきます。

 

サルコペニアとは?

簡単にいうと『サルコペニア』とは、加齢や疾患により全身の「筋肉量」が低下し
その結果として「身体機能の低下が起こること」を指します。

サルコペニアという用語は、ギリシャ語で筋肉を表す
「sarx (sarco:サルコ)」と喪失を表す「penia(ぺニア)」を合わせた言葉です。

 

サルコペニアの分類

サルコペニアは、
加齢が原因で起こる「一次性サルコペニア」
加齢以外にも原因がある「二次性サルコペニア」に分類されます。

「二次性サルコペニア」はさらに3つに分けられます。

・活動に関連するサルコペニア
寝たきりの生活や活動性が低下することによって起こる廃用によるもの

・疾患に関連するサルコペニア
癌や虚血性心不全、末期腎不全、内分泌疾患などの疾患によるもの

・栄養に関連するサルコペニア
栄養の吸収不良、消化管疾患や薬の副作用による食欲不振、
エネルギー・タンパク質の摂取不足によるもの

加齢に加えて、日常的に動かなかったり、病気になると加速度的に筋力は落ちていきます。

 

リハビリでの過剰な運動で筋力が落ちるメカニズム

筋肉の量は筋タンパクの「合成」と「分解」が、「日々」繰返し行われることで維持されています。

この「日々」という所がポイントで毎日「破壊」と「再生」を繰り返しているのです。
「破壊」=「再生」であれば筋力は維持されます。
まずは、この事を知っておいてください。

そして、筋の生理活性として何もしなくても(動いていなくても)筋は「破壊」の方向に進みます。
筋が「再生」に向かうには、どれだけ動いたかという負荷(ストレス)を
「再生」をつかさどる因子に伝えることが必要になります。
そうすることで、これだけ「再生」しようというシグナルになります。

例えば、筋の「破壊」が「再生」の割合より大きくなればどうなるでしょうか?
「破壊」>「再生」の状態です。

そうです。筋肉量は低下します。

この「破壊」の割合が進む原因として

1.筋肉の合成に必要なタンパク質の減少
つまり、「破壊」=「再生」を成立させるだけの
日頃のタンパク質の摂取量が足りていない状態です。

2.過度な運動
「再生」能力を上回る運動を行う事で「破壊」の方に進んでしまいます。
タンパク質を摂取していない状態で運動をしてしまうと
筋肉が作られずに筋力が低下してしまいます。

加齢によって、筋肉の増加に関係する性ホルモンが減少するといわれています。
そのため年齢の若い方よりも筋肉量は低下しやすくなります。

 

どうすれば筋力が改善するか?

では、どうすれば筋力は改善するのでしょうか?

答えは『タンパク質の摂取量』を上げる事です。

病院・施設では食事の栄養管理は、管理栄養士により行われているので
栄養状態については充足しています。

しかし、提供された食事量をすべて食べきれているとは限りません。

例えば、認知症があるケースでは食物認知が低下していて摂取しないケースや
食思が湧かない、食事の嗜好が合わないといったケースもみられます。

出来れば、提供した食事を摂取してもらいたいという思いはあるのですが、
それが難しいケースも存在します。

 

食事が摂取できない方へのリハビリでの対応

毎日、3食の食事がとれない方に対しては本人へのアセスメントが必要になります。

本人から食事への意欲・嗜好が聞ける場合なら、本人の意向に沿ったものに変更する、
直接本人から聴取できない場合は、家族や入所先から情報収集をするなどです。

1食分の量が多いという方には、1回の食事量を減らし回数を増やすなどの工夫が必要です。

他にも栄養補助食品を試してみるという手もあります。
今は味も色々あって、私たちがが食べても「おいしい!」と思えるものもあります。

 

まとめ

ザックリとした形で「過剰なリハビリで筋力低下が起こる理由とその対応」について
説明させていただきました。

1つ覚えていて欲しいのは、筋肉は毎日動かすことで「破壊」され
食事でタンパク質をとる事で環境に適応した筋肉量まで「再生」されるということです。

そのため活動量が低下すると、動かない生活範囲に適応した筋力しか「再生」されません。
これが「廃用症候群での筋力低下」となります。

そして、リハビリをする前には「食事」特に「タンパク質」の摂取が必要になってきます。
リハビリでは食事がしっかりとれているか評価が必要になります。

患者さんには色々な方がいます。その対応も多様になります。
自分の担当患者さんは、どういう人なのか関心を持って接することが大事だと思います。

食事の摂取に関してはリハビリ職だけでの解決は正直難しいです。
急性期病院であれば管理栄養士の方に相談してみるのがいいと思います。

皆さんのご参考にしていただければ幸いです。

toaru

急性期病院で働いている、臨床5年目の作業療法士です。作業療法士に役立つ情報を発信していきます。

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