こんにちは、作業療法士のトアルです。
人は日常生活の中で色々なものをつかんで作業をします。
作業療法士なら手の領域を見る事は多いと思うのですが、
この「つかみ」って理解するのが難しいのではないでしょうか?
参考書には様々な種類の「にぎり」の様式が記載されていますが、
手指の解剖・運動学が細かいため覚えにくいなぁって印象があります。
なので、今回は基本的な「にぎり」を3種類に絞って解説していこうと思います。
第一弾として柄があるものを握る動作である「ハンマーにぎり」ついて解説させて頂きます。
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「ハンマーにぎり」は別名「パワーグリップ」(power grip)ともいわれ、
手全体で握る力強い握り意味しています。
ただ、この握りの様式は手指が手掌に向けて握り、それを母指が覆って押さえるようにして行われるので、実際には第一中手骨が存在し、母指球筋が機能していれば、障害で少しの筋力低下がみられたり、長母指屈筋の出力が不十分でも「ハンマーにぎり」を行うのに支障はありません。
この握りで重要な役割を果たすのは第4指・第5指(環指・小指)の屈曲になります。
この屈曲の筋力が低下すると、握力を著しく低下させることになります。
「ハンマーにぎり」は、名前の通り釘を板に打ち付ける動作です。
日常生活では食事の支度のときに包丁やフライパンを持つ動作もその一例になります。
この握りには、筋力と耐久性を必要とします。
「ハンマーにぎり」に必要な筋肉は「深指屈筋」「浅指屈筋」になります。
これと同時に、MP関節の安定性と屈曲力の増強のために
「手内在筋」の作用が重要になります。
これらの筋肉は尺骨神経支配の筋肉が中心となるため、尺骨神経の損傷例では
「ハンマーにぎり」が障害され、握力は著しく低下します。
この握りを必要とするのは重労働に携わる方が多く、
職業復帰にとって大きな障害となります。
いかがでしたでしょうか?
今回は「ハンマーにぎり」について解説させて頂きました。
対象者のADL状況や職業によっても必要とされる「にぎり」動作は異なると思います。
例えば、主婦の方であれば「調理」のときに包丁やフライパンを使用します。
筋力が足りなければ、長時間フライパンを持ち続けることができませんし
包丁を使い、千切りなどを行う動作には持久性が必要になってきます。
筋力低下があり、調理について作業療法士が評価するときに必要なのは
「動作を行える時間」と「疲労度」になるのではないかと思います。
筋力が落ちていれば、この2つの項目が障害されてきます。
これを正確に「回数」もしくは「具体的に時間をはかる」ことが必要です。
回数であればカウントを、時間をはかるにはストップウオッチを使用します。
具体的にどれだけの時間道具を持てるのか、どれだけ動作の回数ができるのかを
評価します。
評価しただけでは訓練にならないんで、これを対象者にフィードバックして、
どれだけできれば対象者が「満足できるのか」を評価していくのが重要と考えています。
調理はICFでいうところの「活動」になるんで、その活動が満足にできるのであれば
身体機能もほぼ向上してると言い換えることもできますし、
代替手段を用いた場合でも、対象者がその活動状況に満足できているのであれば
自宅での生活も支障がないのではないかと推測されます。
「回数」や「時間」など具体的な目標があれば、
対象者も「やらなきゃいけない」という「動機づけ」にもなりますし
どのタイミングで休憩をとればいいか、どれくらい時間をとれば作業が再開できるか、
などの目安にもなります。
調理を例にとりましたが、これは同じ動作を必要とする他の職業(例えば大工)などの場合
でも同じように考えられるのではないかなと私は考えています。
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。