Categories: 作業療法士の働き方

「臨床実習指導者研修会(中・上級)」について解説

こんにちは。作業療法士のトアルです。

皆さんは、臨床実習制度の方針が2020年から変更になることをご存知でしょうか?
これは平成 11 年に作業療法士の学校養成施設指定規則の見直しを行って以来のことです。

では、今回なぜこの内容の変更が行われることになったのでしょうか?

背景としては、3つあげられます。
一つ目は「社会情勢の変化」
二つ目は「養成校の増加による臨床実習の内容のバラつき」
三つ目は「臨床実習での実習生の負担軽減」
です。

※ちなみに今回の記事では分かりやすくするため、「理学療法士」という文言
 はあえて省かせてもらってますのであしからず。

社会情勢の変化

高齢化に伴う医療の需要が増えたことや、地域包括ケアシステムが導入されたことにより
作業療法士に求められる役割や知識等が変化したことがあげられます。

つまり、作業療法士の役割を明確にしていこうという考えがあったのではないかと考えています。
今後はMTDLPを活用して作業療法士の立ち位置や存在意義を多くの人に知ってもらおうという
意図があるのではないでしょうか。

 

養成校の増加による臨床実習の内容のバラつき

もう一つは学校養成施設の増加で、臨床実習の在り方の見直しが求められていたためです。

ある養成校の方針は、特手の症例を持たずに症例報告を行わないなど
クリニカルクラークシップを中心に実習を行なったりしますが、
別の養成校では、従来通りのやり方で実習を進めるという方針の所もあります。

これでは実習を受ける側の病院・施設も混乱しますし、
学生自身が行う学習内容や質の担保についてもバラつきが生じます。

 

臨床実習での実習生の負担軽減

3つ目の目的として「臨床実習での実習生の負担軽減」が上げられます。

今回のガイドライン改訂前に行った臨床実習についてのアンケート調査で、
75%の学生が「毎日自宅に持ち帰り課題を行っていた」と回答し、
60%以上が「1日に3時間以上は自宅で課題に費やした」と回答したそうです。

今回の改訂では、臨床実習1単位の時間数を 40 時間以上の実習を基盤として
実習時間外に行う課題がある場合には、その時間も含め 45 時間以内とする方針を定めました。

つまり、病院・施設での実働時間の最低は40時間。
それ以外の課題をする場合は、その時間を含めても45時間以内に収めて下さいという内容です。
これは症例報告用の原稿の作成時間も含まれます。

国が打ち出している「働き方改革」や長時間の指導によるパワーハラスメントに
対しての対応策なのかなと個人的には思っています。

今後の臨床実習はどうなるか?

「作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会」の最終報告書によって、
作業療法士学校養成施設指定規則および指導ガイドラインが示されました。

厚生労働省からの正式な公布はまだのようですが、2020年度入学予定者からの臨床実習指導は、
この新しい実習指針と手引きに基づいた講習会を修了した者が行うことが義務付けられることが
確定しているようです。

 

OT指導者研修の目的

では「これからは臨床実習はどう変わるのか」ってことですが、
簡単に言うと、今回改訂される「作業療法士学校養成施設指定規則」に盛り込まれている
「臨床実習指導者講習会」の方針に沿って行かなければ、
今後は病院・施設は実習生の指導はできませんよってことになります。

いずれ、厚生労働省から正式な指導者育成のカリキュラムの発表があると思いますが、
時間が差し迫っているため、猶予期間と仮の措置カリキュラムを設けてあります。

それが「臨床実習指導者研修会(中・上級)」になります。

仮とは言っても厚生労働省指定のカリキュラムとほぼ同じ内容にはなっているようですね。

この研修会の修了者は厚生労働省指定講習会の修了証と同様とみなすことになっているようです。

「中級・上級」という区分になっているのは、今回の改定にあたり、
実習指導の経験年数や認定OTの力量を加味しているからです。

以下の条件を満たしている場合、申請すれば各々の臨床実習指導者研修を
修了したものとみなされるようです。
(この申請は2013年度から始まっており、2018年度3月で締め切られています。)

【臨床実習指導 初級コース】
→ 現職者共通 「作業療法における協業・後輩育成」 「職業倫理」 受講で免除
【臨床実習指導 中級コース】
→ 認定OT研修会 「教育法」 受講で免除
【臨床実習指導 上級コース】
→ 認定OT研修会 「管理・運営」 受講で免除

 

臨床指導者研修(中級・上級)の受講条件

応募条件は3つあり、

1.免許取得後4年以上(経験5年目以上)。
2.日本作業療法士協会正会員かつ各都道府県士会正会員。
3.日本作業療法士協会基礎研修修了者または
現職者共通研修の2.「作業療法における協業・後輩育成」と3.「職業倫理」を受講済みの者。

となっています。

簡単にいうと、臨床実習指導者研修(中級・上級)を受けるには、
最低でも臨床経験5年以上で日本作業療法士協会の正会員になっており、
各都道府県の県士会に属していて現職者共通研修の2と3を終了している必要があるってことですね。

講義の内容については以下の5つの項目があります。

1.作業療法士養成施設における臨床実習制度の理念と概要
2.作業療法臨床実習の意義と目標
3.診療参加型による臨床実習指導方法論
4.作業療法臨床実習における管理・運営
5.作業療法臨床実習における学生評価

 

まとめ

少し考えたくないことですが、「臨床実習指導者講習を受講してないからバイザー業務はできない」
といって、バイザーの仕事から逃れようとするスタッフがでてくるケースもあると思います。

このケースのように意図的に講習を受けない人もいれば、
ただ単純に講習に行く機会を逃している人もいると思います。

そうなると、臨床実習指導者講習を受講済みの、一部のリハスタッフだけが
バイザーとしての業務を担うということも考えられます。

これはリハビリ部門の管理者の判断にかかってくるとは思いますが、
条件を満たしているスタッフに講習の受講をしてもらうなど、
業務の負担を軽減する取り組みを行う必要があると思います。

義務的に講習に参加しなければならないという一面はありますが、
「次世代・後輩の育成のため」という視点を持ちつつ、
前向きに講習・実習指導にあたる必要があると思います。

バイザーなりの苦労はあると思いますが、学生を指導する中で
自分なりの気付きを得て成長することもできると思います。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。

toaru

急性期病院で働いている、臨床5年目の作業療法士です。作業療法士に役立つ情報を発信していきます。

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