こんにちは。作業療法士のトアルです。
今回は「共依存」についての知識を整理したいと思います。
みなさん、「依存」という言葉は聞いたことがありますか?
・アルコール依存
・薬物依存
・ギャンブル依存
最近ではスマホ依存なども聞かれます。
これらの依存は人が何らかの物や環境に依存している状態です。
「共依存」というのは、本人や周りも問題を感じながらも
それが共依存だと無自覚でいることが多い依存です。
共依存という概念は、元々アルコール依存症患者を世話・介護する家族の依存関係から
経験則的にコメディカルから生まれたもので、以前は、Co-alcoholic(アルコール依存症の家族)と
呼ばれていたそうです。
時代を追う事にアルコール依存の臨床で、依存者の家族の中に「依存者への世話に依存している人」が
発見され、その人が依存を後押ししている事実がわかってきました。
そして、アルコール依存の回復過程において「家族からの隔離」が有効であることがわかってきたそうです。
この事から、アルコール依存が個人の精神的な問題から、依存者の人間関係に焦点が移ってきました。
依存者の回復には、本人だけでなくその依存を手助けしている人の治療も必要という認識が広まったそうです。
共依存は『特定の人間関係にとらわれている』ことを指します。
これの何が問題なのかについてあげてみます。
共依存の状態は
1.「依存する人」
2.「依存される人」
に分かれます。
1.「依存する人」の問題点として、依存する対象ではなく、依存してしまう人格面の問題になります。
アルコールに例えれば、「アルコールの飲酒」自体が問題ではなく、
「アルコールの飲酒が悪いと思いながらも継続してしまう」人格の問題といえます。
2.「依存される人」はの問題点は依存的態度の変更が困難であることです。
「自分が見捨てたら、この人はどうなるんだろう?」
「あの人には自分しかいないんだ」
という考え方をしている場合が多いそうです。
一見献身的にも見えますが、他人の世話を過度にするということは
依存する人の能力・自立を奪ってしまうことになります。
この根底には「相手を支配している快感」を得たいという自己中心的な思考があります。
これは無自覚に自分を頼りにさせることを誘導してしまうという行動に現れることもあります。
つまり、共依存とは、
「相手に必要とされる」もしくは「相手に必要とさせる」ことで「自分は他人に必要とされている」という
実感を得て自分の存在価値を得る関係性です。
もう少し詰めていうと、
依存される人が相手の気分や行動で自分の気持ちが左右されてしまうため
ストレスになります。そのストレスを軽減するために相手を支配してコントロールしたくなるのです。
ただし、「依存する人」と「依存される人」が苦痛を感じていないのであれば問題はありません。
この関係性が、苦痛やストレスを感じたり、相手に気分や生活を左右される
という場合は共依存の関係性が作られていることが多いということです。
そして、その問題を克服していけば悩みが改善する可能性があります。
自分の経験からいうと、患者である男性とその母親が共依存の関係になっていることが多いように思います。
(あくまで個人の感想です。)
OTのリハビリで何が問題かというと「更衣動作などADL訓練に母親が手助けをしようとする」
「耐久性向上訓練でしきりに運動負荷を気にする」などがあり、中々訓練が前に進まなくなることがあります。
訓練の意味や必要性を説明するのですが、理解が得られにくい場合もあります。
自分の対応方法として、まず両者に何が良くなって欲しいのか、どうしたいのかを
時間がかかってもいいので丁寧に聴きとるようにしています。
基本といえば基本なのですが、依存される側は依存する側を「何もできない」
と思っている事が多いため、実際にできることを認識してもらいます。
また、依存する側には、人に依存してしまいやすい傾向を、
自分のセルフケアは自分の能力でやってもらうようにします。
いわゆる義務、習慣化ですね。(…ちょっと違うかもしれませんが…)
依存症の改善には依存する本人や、依存される側だけの問題ではないように思えます。
当事者たちが問題に悩んでいても、関係性に関して無自覚であることが多いため、
問題の本質が自覚できず悪循環が繰り返されるケースが多いです。
OTが直接的かつ短期的に問題解決できる事は多くはなく、当事者の自覚を促しながら対応していくため、
改善にはかなりの時間がかかります。特に身障急性期OTでは解決が難しいでしょう。
助けてあげたい、何とかしなきゃと焦る気持ちはわかりますが、時間がかかるということを前提に
落ち着いて対応するようにした方がいいのではないかと思いますよ。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。