こんにちは。作業療法士のトアルです。
この記事は、急性期に入職する新人さんや中途採用で入職する方におススメの記事です。
急性期病院のリハビリでは「早期離床」を行うことが命題となっています。
しかし、私は急性期病院へ就職したのに「早期離床」の意味をあまり理解していませんでした。
理由としては「術後のリハ対象者を離床させるのが怖い」や
「痛がっている人を何故起こす必要があるのか」理由がわからなかったんですね。
一見、不安定な状態の人達を起こしてなんの得があるのだろうと考えていました。
簡単にいえば「離床するメリット」にばかり視点がいっていたのだと思います。
実は「早期離床」が必要な理由を理解するには、「離床するメリット」を考えるよりも、
「離床しないことでのデメリット」について考えた方が理解はしやすいと考えています。
大事なのは「離床しないことで何が起きるか?」というデメリットを知ることです。
普段人は、夜眠る以外は「座位」や「立位」で生活しており、
1日の約7割をこの「座位」や「立位」で過ごしていると言われています。
これは、自分自身の生活サイクルを考えるとわかりやすいと思います。
朝起きて、朝ご飯を食べ、歯磨きをして、仕事に行き、業務をこなして帰宅し…
という風に考えると、寝る以外はほとんど「座位」か「立位」で生活を送っているはずです。
では、入院している患者さんはどうでしょう?
ほとんどの患者さんはベッドで横になり、「臥位」の状態になっています。※1
「座位」や「立位」よりも「臥位」の時間が長く、活動の時間の割合が逆転しています。
では、この「臥位」の状態の一体何が悪いのでしょうか?
※1 治療の必要性から安静臥床となっている場合もあります。
ベッド上で横になっている事を「臥床」ともいいます。
「臥位」も「臥床」もほぼ同じ意味ですが、一般的には「臥位」は一時的に横になっている姿勢で、
「臥床」は長期的に横になっているイメージがあります。期間が長ければ「長期臥床」ともいわれます。
では、この「臥床」の何がいけないのでしょうか?
人は進化の過程で直立姿勢で2足歩行をする動物です。簡単にいえば起きている状態が普通です。
睡眠で臥位姿勢をとる以外は身体はその直立2足歩行に適応した生理学的機能を持っています。
しかし、何らかの理由で「長期臥床」の状態になると、直立2足歩行での生活では保たれていた
生理学的機能が変化し、変調をきたしていきます。
これを「廃用症候群」といいます。
この「廃用症候群」ですが、臥床状態で過ごしていると遷延化し始め、
いざ離床となった場合に様々な支障をきたします。
例えば、離床と同時に血圧が下がり、失神してしまう「起立性低血圧」や、
筋力が落ちて歩けなくなる「廃用性筋萎縮」などがあります。
このような状態に陥って、果たして入院前の生活が送れるのでしょうか?
仮に自宅に帰ったとしても1人で立てば、失神や筋力低下で上手く姿勢を維持できず、
転倒し骨折や頭部外傷などのリスクもあります。
では、この「廃用症候群」を未然に防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?
この「長期臥床」により生じる「廃用症候群」をどのように防げばいいのでしょうか?
その答えなのですが「なるべく臥床の期間を短くすること」=「早期離床」になります。
急性期病院でのリハビリでは、「廃用症候群」を予防するために「早期離床」を行っていく
というのが基本的な考え方になっていきます。
「臥床」で生じる問題なので「座位」「立位」へ戻していけば、
その問題を解決していけると考えていけばいいんですね。
入院中の患者さんは、軽症の方もいれば重症の方もいます。
常に安定した座位や立位姿勢を取れるわけではありません。
時には、介助も必要になりますし、病棟看護師と協力して離床を行うこともあります。
今回は「早期離床の必要性」について解説させていただきました。
早期離床の意味を理解するには「離床しないことでのデメリット」について知る方が
分かりやすいと思っています。
寝たままで病気が良くなるのであれば、多分ずっと横にしていると思います。
しかし、現実には寝たままでは良くはならないのです。
また、急性期に入職したての頃は、外科手術後にライン類がたくさんついている人をみて、
「え、こんな人離床させるの?」とか「傷が開くんじゃないか?」とビビってしまうなど、
セラピスト側の経験不足からくる心理的なバリアも働き離床に消極的になりがちです。
普通は入職してすぐのセラピストに重症の患者さんを担当させたりしませんし、
先輩が一緒にリハビリ介入をして指導してくれると思います。
離床にあたっては、どこまでが安全に離床できて、どこまでが危険なのかを知る必要があります。
それには医師や看護師と相談したり、自分自身でアセスメントする能力が必要になります。
このアセスメントをフィジカルアセスメントといいますが、
急性期病院で働くには必須の技術だと思います。
フィジカルアセスメントについてもいずれ記事にしたいと思っています。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。