Categories: 作業療法(急性期)

リハビリでの感覚(知覚)検査についての基礎知識

こんにちは。作業療法士のトアルです。

感覚(知覚)検査は脳外リハ・運動器リハを問わず、臨床でとても大事になりますよね。

ですが、検査方法の数が多く、慣れていないと要領実もつかみにくいので
学生の頃は訳が分からず慌てる事も多いはず。

養成校で知識は入っていても、実習などで現場に行くと、「こういう場合どうするんだっけ?」
など、いざとなると通用しないということが多いのではないかと思います。

そこで、今回は感覚検査についての復習も兼ねながら「感覚障害検査の基礎知識」
ついてまとめていこうと思います。

感覚とは?

まず、「感覚」って何でしょう?言葉の定義から確認してみます。

動物が体の内外の環境変化(刺激)に対応しながら、自己の生活機能をもっとも有利な状態に維持していくためには、絶えず体の内外の刺激を検出していなければならない。このように体の内外の環境の変化を刺激として感知する機能を感覚という。
                                 出典:日本大百科全書より

簡単にいうと人間を含めた動物は外界から受けた刺激によって適切な反応をします
それを「感覚」と呼びますよということです。

感覚を受け取るには、体にある「感覚受容器」が働く必要があるので、
それが正常に働いているか、病気で異常が起きているのかを確認・評価するのが
PT・OTの「感覚検査」になります。

基本的に「感覚」は「感覚受容器」で刺激を受け取り「神経」を通って「脳」で知覚されます。

なので「感覚検査」と臨床ではよく言われますが、「感覚受容器」→「神経」→「脳」という
一連の流れがあり、この流れの中のどこで障害が生じているのかを見ていきます。

「感覚」と「知覚」の違い

余談ですが、感覚受容器・神経・脳など構造的な障害がある場合は「感覚」という表現を、
患者さんに起きているADL・IADの機能的な障害がある場合は「知覚」という表現をします。

 

感覚の種類

人の備わっている「感覚」は大きく3つに分けられます。

1.体性感覚
2.内臓感覚
3.特殊感覚

です。

この中でも、「体性感覚」は「表在感覚」「深部感覚」に分けられます。
具体的にどういった感覚なのかは下の表をご覧になって下さい。

今回は「体性感覚」の「表在感覚」と「深部感覚」について解説させて頂きます。

リハビリでの臨床でも「表在感覚」の3つの感覚と、「深部感覚」の2つ感覚の基礎を
押さえておけば、ほとんどのことは対応はできます。

 

体性感覚の2つのカテゴリー

「体性感覚」はカテゴリーは2つに分けられ、以下のようになっています。

・表在感覚
・深部感覚  の2つです。

ザックリと身体の部位でいうと
「表在感覚」は「皮膚」の検査「深部感覚」は「関節・筋・骨膜」の検査
覚えておけばいいかもしれません。

以下にこれらを詳しく解説していきます。

 

表在感覚とは?

表在感覚とは上でも述べたように「感覚受容器」が「皮膚」にあるものです。

感覚受容器は「痛覚」「温度覚」「触覚」に分けられます。
基本的には、これら3つを検査・評価することになります。

痛覚とは?

「痛覚」の感覚受容器は「自由神経終末」と呼ばれます。

ただし、これは「皮膚」を介した感覚に限られていて、
「筋」「腱」に圧迫を加えた場合に感じる痛みは「深部痛覚」とよび、
これは「深部感覚」に含まれます。

また、内臓などの痛みは「内臓痛」と呼ばれ、求心性の「自律神経」が
関与していて「痛覚」とは異なります。

 

温度覚とは?

続いて「温度覚」ですが、感覚受容器は3つあり、
「自由神経終末」「ルフィ二小体」「クラウゼ球」が関与します。

「温度覚」の伝導路は「痛覚」と同じ伝導路を通るため、脳卒中の患者さんの場合は
「痛覚」で代用することが多いです。

ただし、これはあくまでも純粋な脳卒中の場合だけで、脊髄疾患や末梢神経疾患の場合では、
詳細に検査する必要があります。

既往に脊髄疾患や末梢神経疾患がある場合も多いのです。

 

触覚とは?

最後に「触覚」ですが、感覚受容器は2つあり、
「マイスナー小体」「メルケル板」が関与します。

「圧覚」という感覚もありますが、単独で障害されることが場合が少なく検査も難しいです。
臨床的には「触覚」に含まれるので、脳卒中のリハビリでの感覚検査ではあまり行われません。

「圧覚」の感覚受容器は「パッチー二小体」が関与します。

また、「触覚」が発生するには、体毛も刺激することが多いため、
「毛根神経叢」が触覚の感覚受容器の一部として機能することもあります。

 

深部感覚とは?

「深部感覚」とは「関節」「筋肉」「骨膜」に感覚受容器があるものです。

「振動覚」「位置覚」がそれにあたります。

以下に解説をしていきます。

振動覚とは?

「振動覚」は骨の突起に128Hzの音叉を使い検査を行います。

骨の突起に音叉をあてると骨膜にある「振動覚」の感覚受容器である、
「パッチーニ小体」が刺激されて、振動として知覚されます。

振動覚検査と動的触覚検査の違い

少しややこしいのですが、感覚検査の中でも「動的触覚検査」というものがあります。
これも音叉を使うのですが、この検査では30Hz256Hzの2種類の音叉を使用します。

動的触覚検査の意義は『物の表面の粗滑を識別する機能』『巧緻動作』に関わる部分が
正常に機能しているかを測る検査になります。

30Hzでは「マイスナー小体」、256Hzでは「パッチーニ小体」が働くとされています。

この2つの受容器は加えられた刺激にすぐに順応する性質があり、物に触れた瞬間に
インパルスの放電があるのみで刺激が持続的に加えられても、刺激を強くしても
インパルスの放電が起きません。

「振動受容器」ともいわれ、物をつまんだ時離すときに発火します。

つまり、何か刺激が加わった初めと終わりにだけ反応し、その間どんなに刺激が入っても
「マイスナー小体」と「パッチーニ小体」は反応しません。
(もちろん、程度によりますが。)

「振動覚検査」と「動的触覚検査」に音叉を使用するのは、刺激の開始時とそれを終了したときに
受容器に刺激が加わり、それ以外では同一の振動が持続し続ける性質があるのを利用しているためです。

 

位置覚とは?

「位置覚」関節がどの位置にあるかを伝える感覚です。

組織によって存在する「位置覚」の感覚受容器は異なっています。
関節の「関節包」には「パッチーニ小体」「筋肉」にあるものは「筋紡錘」です。

また、関節周囲の皮膚なども「位置覚」に関与していると言われています。

教科書によっては「運動覚」と表記されている場合もありますが、
厳密に分けるのが難しいので、臨床的には「位置覚」と同じ意味と捉えていても
いいかもしれません。

上記の表在感覚の痛覚のところで解説したように、「筋」などに圧迫が加わった場合に
感じる「深部痛覚」も「深部感覚」に含めます。

おわりに

ここまでの説明で、「体性感覚」である「表在感覚」と「深部感覚」について
理解できたでしょうか?

「では今度はどうやって感覚検査で何を行えばいいの?」
ってことになりますよね。

次回は「表在感覚」「深部感覚」の検査法について解説していきます。

toaru

急性期病院で働いている、臨床5年目の作業療法士です。作業療法士に役立つ情報を発信していきます。

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