こんにちは。作業療法士のトアルです。
今回は前回に引き続き、頭蓋内圧と脳ヘルニアについての基礎知識について
解説させて頂きたいと思います。
前回の記事:「脳浮腫」について説明できますか?作業療法士がその基礎知識を解説
Contents
「頭蓋内圧」「脳圧」呼び方は2つありますが、意味は同じです。
文字通り、頭蓋骨内の圧のことで通常は60~180㎜H2Oで保たれています。
頭蓋骨内の容積は一定であり、何らかの要素が増えると圧力が上昇します。
頭蓋内圧を決定する因子は以下の3つです。
①脳実質
②脳脊髄液
③血液
例外として脳腫瘍や血種などの④占拠性病変があります。
頭蓋内圧を決定する①脳実質、②脳脊髄液、③血液の割合は
①脳実質:②脳脊髄液:③血液=8:1:1
と言われています。この割合が崩れてしまうと頭蓋内圧が変化してしまいます。
頭蓋の解剖として表面から、皮膚→頭蓋骨→硬膜→クモ膜→軟膜となっています。
クモ膜と軟膜の間には脳脊髄液が流れています。
以下の図表を参考にしてみて下さい。
出典:Wikipedia
頭蓋内の容量は、個人個人で決められています。
一定の容量に一定の割合を保つことで脳の機能を維持していますが、
そこに病変が加わると均衡が崩れ頭蓋内圧が変化します。
例えば、脳が損傷して脳浮腫が生じると頭蓋内に変化が起きます。
頭蓋内は容量が一定であるため、その空間内で浮腫が起きると
無理やりモノを詰め込んでいる状態になり圧が上昇します。
これを「頭蓋内圧亢進」といいます。
頭蓋内圧亢進の急性症状には、噴出様嘔吐・頭痛・意識障害・血圧上昇・徐脈があります。
慢性期に侵攻すると頭痛・嘔吐・うっ血乳頭を呈します。
脳実質の増大は主として脳浮腫によるものです。以下に脳浮腫ごとの対応策を説明していきます。
血管原性脳浮腫(脳腫瘍など)にはステロイドが著効します。
間質性浮腫(水頭症)は脳脊髄液除去のため脳室ドレナージ・腰椎穿刺・シャント術を行います。
細胞障害性脳浮腫(脳梗塞など)はステロイドは効果が少なく、内減圧術、外減圧術を行います。
頭蓋内圧と容量は密接に関係しています。
頭蓋内圧の上昇が極少量の場合でも、圧は急激に高まり脳ヘルニアを起こす可能性があります。
しかし、上昇とは逆に極少量の水分除去で圧が急降下するため減圧の処置は有効となります。
※それぞれの脳浮腫にの解説ついては ↓ の記事を参考にしてみて下さい。
「脳浮腫」について説明できますか?作業療法士がその基礎知識を解説
脳浮腫の治療薬としては浸透圧利尿薬があり、D‐マニトール・グリセロールなどがあります。
特にグリセロールがよく用いられます。
効果については以下の表を参考にしてみて下さい。
頭蓋内圧が高いと予測される場合は、頭部挙上(セミファーラー位)による
静脈還流の促通も有効とされています。
ヘッドアップ15~30度で効果が高いと言われますが
血圧低下に注意が必要です。
脳ヘルニアとは、局所性・または全体の脳圧の上昇のため脳が移動・変形する危険な状態です。
「瞳孔不同」は脳ヘルニアの初期に見られる所見となります。
そのため、緊急搬入時にはできるだけ早く瞳孔のサイズを測定する必要があります。
また、急性期では毎回の測定が必要になります。
「瞳孔不同」は脳に何かしらの障害を来している場合が多く、見逃してはいけない所見です。
大孔頭ヘルニアを来した場合、延髄を圧迫し最悪の場合は死に至ることがあります。
そのため瞳孔不同の時点で手を打つ必要があり、脳外科では予め瞳孔サイズを確認し
経時的に観察する必要があります。
何かしらの影響でテント切痕ヘルニア(脳を分ける深いV字の切れ込み)になると、
テント切痕付近を走行している動眼神経を圧迫し、眼瞼下垂や散瞳を生じます。
脳ヘルニアの部位が頭蓋内主幹動脈の前大脳動脈・中大脳動脈・後大脳動脈を圧迫して
脳梗塞を起こし、下肢麻痺・片麻痺・同名半盲などを生じることもあります。
今回は、「頭蓋内圧亢進と脳ヘルニア」についての基礎知識について解説させて頂きました。
リハビリでは、頭蓋内圧が高まることで生じる症状を知り、
それに対応するリスク管理が必要になります。
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。