「脳浮腫」について説明できますか?作業療法士がその基礎知識を解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

セラピストをしていると「脳浮腫」という言葉をよく聞くと思いますが、
「どんな状態か?」
と問われると説明ができるでしょうか?

今回は「脳浮腫」についての基礎知識について解説をしたいと思います。

脳浮腫とは何か?

脳浮腫とは細胞内・細胞間質に液体が溜まった状態です。
脳浮腫による障害には、

①脳浮腫による局所性の機能低下
②頭蓋内圧亢進による脳ヘルニア

があります。

脳浮腫の治療薬

薬物療法では脳浮腫治療薬(マニトール・グリセロール・イソバイド)があります。
ステロイドを使用することが多くなりますが、
外科的治療では外減圧術、内減圧術、脳室ドレナージを行う場合があります。

脳浮腫の画像での評価

脳浮腫の評価はMRI画像が分かりやすく、特にFLAIR画像が重要です。

白質病変の評価では

・脳浮腫
・脱髄病変
・脳炎
・脳膿瘍の周囲
・脳梗塞の凝固壊死
・てんかん重責状態

がないか評価が必要になります。

脳浮腫の種類

脳浮腫は

1.「血管原性脳浮腫」
2.「間質性浮腫」
3.
「細胞障害性浮腫」

の3つに分けられます。
概要は以下の表を参考にしてみて下さい。

以下にそれぞれを説明していきます。

1.血管原生脳浮腫(Vasogenic brain edema)

血管原生浮腫は血管の透過性亢進によるものです。
脳出血・脳梗塞・脳腫瘍・脳挫傷など脳疾患の全般的に見られます。

血管原性脳浮腫の機序

血管から血漿成分の水分が漏れ出し、大脳半球の白質を中心とした広範囲な部分に脳浮腫が及びます。

機序としては上記のような流れになります。

血管原性脳浮腫の治療

可逆性であり治療としてはステロイド(副腎皮質ホルモン剤)が著効します。
それにより症状が一時的に消滅することもあります。

血管原性脳浮腫の画像評価

セラピストはMRI画像で脳浮腫の部位と範囲を確認し
脳機能低下の可能性を推測しながら実際の症状と対比します。

高血圧で生じる血管原性脳浮腫の機序

血管の透過性亢進は血圧が脳血流自動調整能の上限を超えると生じることもあり
「高血圧性脳症」と診断されます。

画像では脳幹や小脳を含む後方循環系に血管原性浮腫を来すことが多く、
降圧により改善するなど可逆性でありPRES(可逆性後部白質脳症)と呼ばれます。

2.間質性脳浮腫(Interstitial brain edema:静水圧性脳浮腫)

間質性浮腫の代表的な疾患は「水頭症」です。
機序としては脳室内圧が上昇することで、脳脊髄液が脳室周囲に移行していきます。

間質性脳浮腫の治療

髄液除去試験(タップテスト)により脳浮腫が一過性に軽減し、
症状が改善した場合は水頭症手術を施行します。

間質性脳浮腫の画像評価

画像上で確認すべきことはCTで脳室周囲低吸収域を
MRIでは脳室周囲高信号が出現していないかを鑑別することです。

3.細胞障害性脳浮腫(Cytotoxic brain edema:細胞毒性脳浮腫)

細胞障害性浮腫は細胞が壊死し膨張するものです。
これは血管原性脳浮腫や間質性脳浮腫と異なり細胞内に浮腫を起こす脳浮腫になります。

脳梗塞が代表的で、てんかん重積症状でも生じます。
不可逆性の場合が多いのが特徴です。
※可逆性の場合もあります。

細胞障害性脳浮腫の画像評価

MRI画像上では早期にDWI(拡散強調画像)で高信号を示し、
少し遅れてFLAIR画像で高信号、その後CTで低吸収域となります。

種々の疾患における脳浮腫

その他の脳浮腫として3つ取り上げます。
上記に挙げた3つの脳浮腫が混在する病態となります。

虚血性脳浮腫

脳梗塞の時には、実際には血管原性浮腫と細胞障害性浮腫が混在します。

挫傷性脳浮腫

脳挫傷では、浮腫の生じる時間で分類します。

・受傷後24時間以内に出現する早期浮腫
・48時間以降に脳挫傷周辺部の白質に広がる遅発性挫傷周囲浮腫

があります。

前者は壊れた組織を取り囲むように浮腫液が貯留する細胞障害性浮腫で、
後者は血管原性浮腫が主体となっています。高齢者では遅発性浮腫が悪化の原因になるケースが多いようです。

悪性脳腫瘍での脳浮腫

グリオーマ(神経膠種)では他の脳腫瘍、脳浮腫と同様に白質病変が生じます。
しかし、脳浮腫のみではなく腫瘍の浸潤が生じる場合もあります。

このケースでは脳梁を介し、反対側の大脳白質に左右対称に腫瘍が伸びることがあります。
バタフライ様(butterfly pattern)と呼ばれ、悪性リンパ腫も同様になります。

 

まとめ

一口に脳浮腫と言っても様々な病態が存在します。

どのような疾患でどのようなパターンの浮腫が生じるかを知る事で
リハビリ介入の可否や早期離床でのリスクの予測がつきやすくなります。

この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。