こんにちは。作業療法士のトアルです。
今回で4回目となる「呼吸困難」シリーズ。
詳細はこちらの記事でどうぞ!
前々回: 「息切れ」と「呼吸困難」その違いって何?
前回 : 急性期ではこれを押さえて安心!「呼吸困難」の評価法4つを解説
今回、取り上げたい事は、『呼吸困難の発生メカニズム』についてです。
そもそも、なぜ「息苦しい人」と「息苦しくない人」がいるのでしょう?
不思議に思ったことは無いでしょうか?
今回は生理学的な機序も絡めながら解説させて頂きます。
実は呼吸困難の発生メカニズムは様々な仮説があり、明確な証明はされていません。
現在、有力な説とされているのは『中枢-末梢ミスマッチ説』です。
呼吸困難は「呼吸をする際の努力感である」ことをこの記事でお伝えしました。
『中枢-末梢ミスマッチ説』とは、どういう説かといいますと
まず「呼吸困難」を「痛覚」や「触覚」などと同様に、一つの感覚と仮定してみます。
呼吸に関わる感覚受容器から入力される「求心性シグナル」と
呼吸中枢から呼吸筋へ「運動しろ」という出力である「遠心性シグナル」の間に
ズレが生じた場合に大脳が「呼吸困難」として知覚するという説です。
つまり、通常の呼吸をするために、予想以上に呼吸筋の活動が必要となる場合に、
「呼吸困難」というが感覚が発生するというものです。
別の言い方をすると、
「楽に息したいが、呼吸をするのに気を遣うため疲弊する」
「がんばって息をしようとしているが、努力が報われない」
という感覚です。
通常の呼吸活動は無意識で制御されています。
その呼吸を意識して、一生懸命行わないと「きつい」というのであれば、
精神的にも肉体的にも、かなりの負担になるはずです。
呼吸調節機構に関わる感覚受容器は以下の2つがあります。
・機械受容器
・化学受容器
これからこの2つの受容器について解説させて頂きます。
機械受容器は呼吸筋の筋線維間にある「筋紡錘」、
肺や気道に存在する「肺伸展受容器」「イリタント受容器」「C線維末端」
などがあります。
また、化学受容器には『中枢化学受容器』と『末梢化学受容器』があります。
『中枢化学受容器』には延髄にある「CO2受容器」があり、
『末梢化学受容器』には「頸動脈小体」「O2受容器」(大動脈弓に存在)
という種類があります。
機械受容器は主に物理的な刺激に反応します。
胸壁や呼吸筋、肺・気道に存在し、肺の進展による喚起運動(深呼吸)や
気道内の異物や炎症などによって刺激され、呼吸中枢へ情報を伝える役割があります。
頸動脈小体や大動脈弓のO2受容器は
PaO2濃度の低下に反応します。
延髄のCO2受容器は主にPaO2濃度の上昇で
刺激され、その情報を呼吸中枢に伝えます。
ここで注意して欲しいのは、機械受容器と化学受容器からの刺激が
直接的な呼吸困難の原因なのかそうでないのかは、まだ解明されていません。
今回は「呼吸困難」の発生メカニズムについて生理学的な機序も含めて解説させて頂きました。
もう一度説明させて頂きますと、呼吸困難とは
「通常の呼吸をするために、予想以上の呼吸筋の活動が必要となる場合に発生する」
というものです。
初めは理解しにくいとは思いますが、順序を追うことでわかるようになるはずです。
基本的には養成校などで習った「感覚→運動」(求心性→遠心性)と似た解釈をすれば
覚えやすいのではないのかなと思います。
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。