「息切れ」と「呼吸困難」その違いって何?




こんにちは。作業療法士のトアルです。

運動した後って息切れしますよね。
特に階段を一気に登った後とか、会話もままならないことがあります。

明らかに運動不足ですね…。

この「息切れ」なんですが、健常の方の場合によく使います。
「呼吸困難感が出てる」とはあまり使わないですよね。

では、患者さんの場合だとどうでしょう?

「息切れ」「呼吸困難」両方とも混同して使われていることが多い気もします。
この2つの言葉、厳密に使い分ける必要はあるのでしょうか?

今回はこの用語の定義と、その対応法について解説していきます。

そもそも「呼吸困難」「息切れ」って何?

「呼吸困難」の定義は呼吸時の不快な感覚という主観的な体験です。
これは「安静時」「労作時」を問いません。

そして「息切れ」の定義について文献によると、

「労作時に起こる一過性の息苦しさであり、呼吸困難のうちに含まれる」

とされています。

重症度で言うと「息切れ」の方が軽症なイメージがあるんですが、
定義に「労作時」という表現があるため、「息切れ」は労作が加わった場合に
使う方が正解に近しいかも知れません。

しかし「息切れ」の定義に「呼吸困難に含まれる」という文言があるように
「息切れ」は呼吸困難の1つの表現として扱われます。

つまり、この2つは別物ではなく日常的な臨床では同義語として解釈されます。

「どういう動作で呼吸が苦しくなったか」を表現できれば、基本的に問題はないのです。

この呼吸ができないときに不快に感じるという感覚の正体は何でしょう?
不思議に思ったことはないですか?

※「息切れ」と「呼吸困難」が同意義で使われることから、以下より「呼吸困難」という言葉で統一します。

 

「呼吸がしにくい」という感覚の正体

米国呼吸器学会によれば、「呼吸困難とは呼吸が不快であるという主観的な体験であり、
様々な強さの質的に異なる感覚からなる」とあります。

「呼吸が不快であるという主観的な体験」とあることから

「無意識で呼吸が自然にできない」→「意識して呼吸をしなければならない」→「呼吸に過剰な努力が必要」

と解釈されます。

つまり、呼吸困難とは『呼吸をする際に起こる努力感』ということができます。
本人の主観的な感覚によって生じるため『自覚症状』になります。

そのため「呼吸困難」ではなく「呼吸困難感」という表現を使うこともあります。
ややこしいのですが「呼吸困難」=「呼吸困難感」という解釈でよいのです。

「呼吸困難」と「呼吸不全」の区別

先に述べたように、一般的に「呼吸困難」という状態は『自覚症状』であるため
必ずしも呼吸機能に問題はありません。

では「呼吸不全」とはどう区別されるのでしょうか?

「呼吸不全」は低酸素血症(動脈血酸素分圧≦60Torr・酸素飽和度≦90%)で定義される
客観的な病態の事になります。

なので、呼吸不全は『客観的』な数値で確認できるものになります。

理解としては

「呼吸困難」→「主観的なもの」
「呼吸不全」→「客観的なもの」

と覚えておくといいかもしれません。

では、これが臨床でどういった問題を起こすのでしょうか?

 

「呼吸困難」と「呼吸不全」への対応

臨床では、「呼吸困難」を訴えるのにSPO2の低下がみられなかったり、
「呼吸困難」を訴えないのにSPO2の低下がみられることもあります。

リハビリ訓練時にはそれぞれについて対応する必要があります。

 

呼吸困難が「あり」SPO2の「低下がない」方への対応

「呼吸困難」は『主観的な自覚症状』になります。

例え、SPO2が90%以上でも「呼吸困難」を訴えることがあります。

この場合は「気のせい」「基準値を超えているから大丈夫」と声掛けするのではなく、
しっかり対応しましょう。

なんせ、患者さんは「息苦しい」のですから。

具体的な対応方法としては

「休息をとる」
「深呼吸を行う」(鼻から吸って、口から吐く)
「安楽肢位の指導」

などがあります。

これで「呼吸困難」が軽減されれば、患者さんも安心しますし、
セラピストへの信頼関係も構築できます。

 

呼吸困難が「なく」SPO2の「低下がある」方への対応

呼吸不全は『客観的』な症状になります。
例え、SPO2が90%以下でも「呼吸困難」を訴えないことがあります。

呼吸器疾患が既往にあり、高齢者の方に見られることが多いです。
酸素飽和度が低下している状態に身体が慣れてしまっているんですね。

この場合は「呼吸困難を訴えていないから大丈夫」と安易に思わず、
しっかりとSPO2をモニタリングしましょう。

医学的にもSPO2≧90%※1に保つのは必須になります。

臨床の場面では「歩行訓練」「ADL動作訓練」の場合に
SPO2の低下がみられることが多いと思います。

本人は息苦しさがないため、さっさと歩いたり、動作を続けることがよくあります。

対応策として患者さんへSPO2の数値の変動を見てもらいながら
本人にペースの配分を指導・提案する形になります。

具体例として

【歩行訓練】
・どれくらいの時間・距離を歩けば、SPO2の低下があるかを本人に提示する。
【ADL動作訓練】
・入浴(洗髪)、更衣のとき連続動作がどれ位でSPO2の低下がみられるかを提示する。

があげられます。

※1:ただし、安静度の数値は病状により変動する事もあります。医師の指示に従って下さい。

 

まとめ

今回は「息切れ」と「呼吸困難」その違い、そのときのリハビリでの対応方法について
解説させて頂きました。

この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。