こんにちは。作業療法士のトアルです。
突然ですが、「霊長類」だけが
正面に目がついている理由をご存知でしょうか?
「霊長類」の頭は正面が平たくて、目は前方にあります。
もし、犬などのように両目が側方についていると物を見るときに、
片目になってしまい遠近感がうまくとれません。
試しにキャップ付きのペンを片目で入れてみて下さい。「そんなの簡単だよ」
という方ほどやってみて欲しいです。
結構難しいです。
きちんと「はめる」には集中しなければなりません。
日常生活で遠近感が失われると、周囲へ気を配るのにかなりの集中力が必要になります。
これが両目だとスムーズにいきます。
霊長類の目が正面についているのは、2点から1点に焦点を合わせることで
距離を正確に測るためなんですね。これは測量にも使われます。
※「三角測量」でググってみて下さい。イメージが湧きやすいです。
つまり人間も含めた霊長類は周囲を見渡した時に
ほぼ自動化された距離分析を行っていると考えられます。
このほうが、エネルギーを無駄に使いませんよね。
脳の障害ではこの距離感がつかみにくくなる障害が出ます。
これを「構成障害」といいます。
そこで今回は、「構成障害」に対しての検査バッテリーである
「コース立方体組み合わせテスト」について解説させていただきます。
Contents
1 辺が3㎝の木製の立方体を組み合わせて17 種類の模様を作る課題からなります。
課題と同じ「絵柄」が出来上がるまでの所要時間と模様図の達成度を測定して知能指数を算定します。
言語の理解や表出が難しい失語症の患者さんに対して行うことができる検査です。
適応年齢は6 歳〜成人までが対象。
・「聴覚・言語障害」のある患者さん
・「高齢者の方」
・「脳血管疾患の後遺症」の患者さん
・「精神発達遅滞」が疑われる患者さん
にも実施されます。
評価場所は集中できる個室などで行います。
構成課題を通して、目標達成における問題解決能力や判断力を知ることができます。
このテストのみで正確な知能指数を測定することは不十分です。
そのため、通常は他の検査も併用しながら評価を行います。
構成障害のある方は、衣服の構成がわからなくなる「着衣失行」や、
階段昇降時の距離感が掴めず、階段昇降に恐怖心を持つ方もいるようです。
検査のメリットとデメリットですが、それぞれ3つずつあります。
【メリット】
1.非言語性の課題のため「言語・聴覚障害者」に対して検査が可能です。
2.図柄に合わせて立方体を並べていくという手順であるため、患者さんへの負担も軽いです。
3.検者側のメリットとしては採点方法が簡単で短時間で行うことができます。
また、検査器具は持ち運びしやすく検査に熟練を要しません。
【デメリット】
1.「視空間認知の障害」や「構成障害」のある患者さんでは予測される知能指数よりも
低くなる場合があります。
2.視覚障害者や両上肢に障害がある者には適応しません。
3.この検査では、知能指数のなかでも動作性 IQ しか測定できないため
知能指数は参考程度に捉えておくようにしましょう。
検査の方法としては以下のようになります。
1 辺 3 cm の木製の立方体を組み合わせて難易度順に並べられた 17 問の模様を
制限時間内に作るテストです。
※6面は(白)(赤)(青)(黄)(赤-白)(青-黄)に塗り分けられています。
難易度に応じて用いる立方体の数は異なります。
・№.1 ~ 9 は 4 個 (2×2)
・№10、11 は9 個 (3×3)
・№12 〜 17 は 16 個 (4×4)
となります。
1.検査者は、立方体が全て色と形で作られていることを説明します。
まず練習用の図案を示して、同じ模様ができるように4 個の立方体を組み合わせる事を説明します。
2.その後、被験者に練習してもらい、それができきれば本検査となります。
※3回繰り返しできない場合には中止となります。
3.図案№.1 から実施し、用意、はじめ」の合図で図案を見せてテストを開始します。
4.検査者は開始と同時に終了までの時間を測定します。
制限時間を超えた場合は、テストを打ち切って次に進みます。
5.№.2以下も同様に行いますが、注意点として被検者が連続して2つ失敗すれば、
それ以降の実施は不能とみなして中止します。
検査に要する時間によって得点が与えられます。最後に合計して総得点を算出します。
所要時間と得点は評価用紙に記載されています。
制限時間内に課題を遂行できなければ得点を与えられません。
知能指数(IQ)を算出する場合も簡単で得られた総得点を検査の手引の別表にあてはめ、
精神年齢(MA)と暦年齢(CA)を求めます。
IQ は
の計算式にあてはめて算出します。
大脳半球の損傷側や損傷領域の違いによって構成障害の誤り方が「質的」に異なるとされています。
左半球損傷の場合ですと実行手順の「適切な段取り」や「計画の困難さ」がみられます。
立方体の外側の輪郭はうまく構成されますが内側の模様の細部の構成に困難さを示されます。
簡単にいうと「アウトライン」は見えていますが「ディテール」が不正確となることが多いようです。
模様の再現が不正確である場合に、誤りに気づくことが多いと言われています。
右半球損傷の場合では「秩序立てて作業を行う」ことが困難となります。
単純な形は再現可能ですが、複雑な形の構成が困難で図案模様の内側の特徴は捉えきれますが
外側の輪郭が捉えられない場合があります。
模様が不正確な場合でも、誤りに気づけないことが多いと言われています。
前頭葉損傷における構成障害の特徴空間を把握する能力は保たれています。
しかし「情動面」での障害が見られます。
「情動面」の障害として
・「衝動性亢進」
・「発動性低下」
・「保続」
などが出現するようです。
「衝動性亢進」のケースでは、手本を確認せず検査を開始したりすることがみられます。
「発動性低下」の場合には促されても検査を行おうとはしないなどの場面がみられます。
「保続」の場合は前の課題の図案を作り続けたりたとえ修正しても同じ図案を作り出そうとします。
この検査を行う事で知能指数だけでなく、課題の遂行場面から病態を理解することもできます。
そのため「誤り方の特徴」を捉えることも重要となってきます。
簡単にまとめてみましたが、活字のみで説明するとかなりの文字数ですね。
やった事の無い人はひるむかもしれません。
でも大丈夫です。
やってみると思ったほど難しくもありませんし採点方法もマニュアル通りに行えば楽にできます。
アドバイスとしては一度ロールプレイ(模擬試験)をしてみることです。
これをするのとしないのでは大分違うと思いますよ。
検査の結果をうけてからですが、障害の程度により今後の訓練や
支援方法も違うため「ADL場面でどのような問題が生じるか」
その特徴を分かりやすく介助者へ説明する必要があると思います。
そのためには他の「神経生理学検査」も併用して行う必要があります。
その他の検査については以下の記事を参考にしてみて下さい。
MMSEについて
レーブン色彩マトリックス検査について
長くなりましたが、お付き合いいただきありがとうございました。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。