こんにちは。作業療法士のトアルです。
皆さんは「メタ認知」という言葉をご存知でしょうか?
精神科で働いている作業療法士には馴染みがあるかもしれませんね。
この「メタ認知」、身障分野で働いている作業療法士にも役立つ知識です。
特に、高次脳機能障害や認知症などの解釈にも使えるのではないかと思います。
今回は「メタ認知」について解説していこうと思います。
Contents
「メタ認知」とは、アメリカの心理学者ジョン・H・フラベルが提唱した概念で、
認知心理学の分野の用語です。
1970年代から研究が進められていましたが、最近まで一般的に知られていませんでした。
最近になって、教育やビジネスの場面で重要な能力の一つとして注目されています。
1976年にジョン・H・フラベルが「メタ認知」の基本概念である「メタ記憶」を定義し、
その後にA・L・ブラウンによって、「理解への理解」である「メタ理解」や
「注意を注意する」という「メタ注意」などの「メタ」概念についての研究が
なされていきました。
それにより、これらの「メタ」概念に共通する「メタ認知」についての
研究が発展して広がりを見せたといわれています。
「メタ認知」とは人間や自分の認知特性についての知識や、自分の認知活動についての制御など
「認知についての認知」の事です。
「メタ」というのは「高次の」という意味で、前回の記事で紹介した
「認知」というものを「高次の」(=メタ)の視点から認知しよう、
というのが「メタ認知」の意味になります。
たとえば、自分が何かをしているときに、自分の中のもう一人の自分が冷静に見ているように
感じた経験はないですか?
こうした自分がに行っている言動について、もう一人の自分が客観的な立場から、
その言動を調整したり調和しようとする能力を「メタ認知」といいます。
メタ認知の概念の起源は、古代ギリシャの哲学者ソクラテスといわれています。
有名な「無知の知」という考え方です。
「彼らは何も知らないのに知っていると思い込んでいるが、
私は何も知らないということを知っている。」
これは、自分が認知している内容を認知している、つまり「メタ認知」が
できているからこそ言える言葉ではないでしょうか。
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「認知についての認知」とはどういう事でしょうか?
例えば、あなたが小学校2年生の時の同じクラスの人の名前を思い出せますか?
時間をかけてゆっくり考えれば何とか思い出せそうな気はしますね。
では、今日の新聞のTV番組欄を1分で全て丸暗記できるでしょうか?
これはちょっと難しいですよね。
このように、ある課題に対して私たちは自分の能力と課題を
「できる」「できない」という天秤にかけます。
「実際に思い出せるかどうか」「記憶できるかどうか」とは別に
「思い出せそうかとか」「記憶できそうか」という判断がある程度は可能なのです。
このような「認知についての認知」のことを「メタ認知」と呼んでいます。
メタ認知には「メタ認知知識」と「メタ認知制御」の二つがあります。
「メタ認知知識」は、大きく3つに分けられます。
・人間の認知的特性
・認知活動の方略
・自分の認知能力の特性
それぞれの例を上げてみます。
「普通の人なら同時にたくさんのことは記憶できない」「10人の話を聞き分けることはできない」
というのは「人間の認知的特性」です。
「暗算が難しい計算でも、筆算なら楽にできる」「難しい話は具体例を出す」
という場合は「認知活動の方略」となります。
「自分は英語の文章を読むのが苦手だが数学は得意だ」といった場合は
「自分の認知能力の特性」になります。
「メタ認知制御」には、認知活動を行うときに「どのような手順で行なっていくか」という
計画(プランニング)や、実際に認知活動を行っていくときに「間違いを起こしていないか」
などモニターを行うこと(モニタリング)などがあります。
実際のメタ認知的な活動はこれらの二つが組み合わせて行われています。
「メタ認知」は、私たちが仕事や学習を効率的・効果的に行っていく過程で、
とても重要な役割を果たしています。
例えば、リハビリ部内で勉強会を開くことになるとします。
そのために資料を作成しなければならないときの事を考えてみましょう。
まず、資料にのせる情報は全て自分が知っていることなのかをきちんと判断していきます。
また、締め切りまでにどのようなペース配分で作業を進めるかを計画しなければなりません。
集めた資料を読みこんで、「自分の得意分野なら短時間でも読めそうだな」とか
「得意分野ではないから、時間がかかりそうだな」などを考えます。
また「どういう構成なら話が分かりやすく伝わるかな」という考えをまとめるため、
下書きも必要ですよね。そして、実際に発表するときのアンチョコも作ったりします。
これらの活動はすべて「メタ認知知識」と「メタ認知制御」が関わっています。
また「どこが理解できていないのか」を把握したり「どうすれば覚えやすいのか」
いうことを知っておくことは、学習を進める上で非常に効果的です。
学校での成績の良い学生は、そうでない学生と比べて、
また短期間で技術や技能を習得できる人はそうでない人と比べて、
メタ認知の能力が高いことがわかっています。
また、スポーツや楽器演奏などの身体技能を身に付けるときに、
自分の身体の動きや操作の対象について言語化できると、技能の獲得に
効果的と言われています。
この理由は自分がどこまでできて、どこができないのかという
自分を客観視する能力や、自分の能力を言語で具体に表現できる
「メタ認知」能力が働いているからといわれています。
今回は「メタ認知とは何か」について解説させていただきました。
メタ認知能力を鍛えることは、ビジネス・教育分野などあらゆる場面で重要とされています。
メタ認知は、自分の思考過程や課題などを客観的に捉えることができるからなんですね。
そうすると、自分で主体的に学習する姿勢や問題解決の能力を高めることが期待できます。
そして、この能力を高めるためには自分の行動を「俯瞰して見る」という作業が必要なんです。
そのために、私がおススメするのは「日記」を書くことです。日記を書く事で、
自分の感情や起こったことについて冷静に分析をすることができます。
大事なのは「こういう問題が起きた」「じゃあどうする?」という
問題解決の視点です。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。