認知とは何か?について作業療法士が解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

医療やリハビリの臨床に出ると「認知機能検査」とか「認知行動療法」とか
「認知がある」とよく「認知」という言葉を耳にします。

ではここで質問します。

「認知」とは一体何でしょう?疑問に思ったことはないですか?

何となくニュアンスはわかるんですが、改めて聞かれると具体的に答えられない
人が多いのではないかと思います。

そこで、今回は「認知とは何か?」について解説します。

作業療法を用いたリハビリにも、応用が利く考え方だと思いますので
よろしければ、最後までお付き合いください。

認知とは?


文自体は短いのですが、分かるような分からないような単語の羅列ですね。
単純に言えば「知識を得るための活動の総称」という事になるのでしょうか。

実は、このこむずかしい文を紐解くキーワードがこの中に隠されています。

それは「心理学」というキーワードです。

養成校では、「解剖学」「運動学」「生理学」は教えられますが、
「心理学」についてはそれほど取り上げられません。
(養成校にもよるとは思いますが。)

この「認知とは?」を紐解くには「心理学」、とりわけ「認知心理学」の知識が必要になります。

 

「認知」を知るには「情報処理アプローチ」という考え方を知る

「認知」を知るには、人の考え方をモデル化した概念が必要になります。
それが「情報処理アプローチ」です。

言葉は堅苦しいのですが、理解するのは難しくないと思います。

 

心の情報処理の順序

私たちは日常の生活の中で、色々なものや音を「見たり」「聞いたり」して、
それを元に「考えたり」、「判断したり」しています。

これは、人間の心が「情報を処理する過程」と捉えることができます。
「見たり」「聞いたり」は入力、「考えたり」は処理、「判断したり」は出力になります。
こうした捉え方を「情報処理アプローチ」と呼びます。

人間の情報処理には段階があり、大まかに「感覚」「知覚」「認知」の3つに分けられます。

これらの境界を明確に区別するのは難しいのですが、
「感覚」「知覚」「認知」の順番でより高次で複雑なものとなっていきます。

それでは以下に「感覚」「知覚」「認知」とは何かについて解説します。

情報処理の1番目の段階「感覚」

一般的に「感覚」というと、物事の捉え方や印象・センスなどの意味を持ちます。

しかし、心理学的には「人が感覚器官から情報を取り入れる過程そのもの」
指すと同時に「外界からの情報を取り入れる1番初めの段階」を表しています。

例えば、視覚は目の前のどの位置にどのような色や明るさの光があるかを捉えていますが、
このような色や明るさなど、最も単純な印象が「感覚」と呼ばれるものにあたります。

この図を見て下さい。ぱっと見では何だかわからないですよね。

でも、緑とか赤とかの「色」や、周囲が真っ暗ではないという「明るさ」はわかると思います。

こういった、感覚受容器から受けた単純な情報「感覚」といいます。

 

情報処理の2番目の段階「知覚」

人がものを見るとき、単純に「明るい」とか「赤い」といった印象しか持たないのではなく、
「どんな形や大きさなのか」とか「1つだけ違う形や大きさのものがどの場所にあるのか」
いったことも感じ取っています。

これらは「明るさ」「色」などの単純な情報から引き出されたより複雑で高次な情報です。
こうした単純な「感覚」から情報を引き出す過程を「知覚」と呼んでいます。

この図を見て下さい。さっきの図からモザイクを取ったものです。
上の図でも、「リンゴかな?」と思った人もいるかもしれません。

でも中には「桃」とか「サクランボ」あるいは他の果物とか思った人もいるかもしれませんよね。

「色」「明るさ」だけでは、その「もの」がなんであるかは正確には判断できないんですよね。
ものの「形」「大きさ」などの情報が必要なわけです。

形状がハッキリすると、ここからここまでが「リンゴの実の部分」、
ここからここまでが「リンゴの葉の部分」など情報を細かく分けることができます。

 

情報処理の3番目の段階「認知」

人は「もの」を見たとき、単に「色」「明るさ」「形」「大きさ」といった情報を引き出す
だけでなく、その「もの」と自分の過去の経験・知識と照らし合わせて考えます。

「あそこに見える丸いものはリンゴかな?」「家の近くにリンゴの木なんてあったかな。」
「近づいて確認しよう。」とか考えたり、
「昨日、家の近所にリンゴの実がなっててさ」と、人に話したりという行動をとったりします。

このように、「知覚」よりも、さらに高次な情報を操作する過程を「認知」と呼んでいます。

「感覚」や「知覚」は、その時点での外界からの入力された情報の処理ですが、
「認知」には過去の経験を思い出したり推論したり、問題を解いたりといった
「記憶」や「思考」と呼ばれる働きも含まれています。

つまり「認知」とは人間の情報処理の3つの段階の最終過程であり、
人が物事を認識するのに必要な過程といえます。

 

リハビリ(作業療法)での応用

認知症では「認知」の段階で過去の記憶との照合が難しくなることも考えられますし、
脳卒中では視覚野が障害されると、形状の判別や向きは理解していても、
実際にどう操作していいか分からない分からないという「思考」の部分で
問題が出ていると推測することができます。

精神疾患の場合では、過去の経験に問題があり、その対処方法が通常の方法とずれていて、
結果的に今の日常生活で問題が生じているというケースもあります。

「認知」に至るまでには、3段階の情報処理があるという事を知っておくと、
作業療法を用いたリハビリで、問題点を焦点化するときや訓練プログラムを立てるときにも、
論理的に順序立てて考えることができるのではないかと思います。

 

補足

心理学において「情報処理アプローチ」が現れてきた背景には、1950年代に汎用電子計算機が
開発され、数値演算以外の様々な素敵な情報処理ができるようになったことが背景にあります。

人の「作業記憶」の考え方は、コンピュータの仕組みについての概念から生まれた概念であり、
情報処理アプローチに基づくことで初めて可能になった研究です。

 

まとめ

今回は「認知とは何か?」について解説させていただきました。

まとめると、「認知」に至るまでには「感覚」「知覚」というプロセスをたどるという事、
なぜこのプロセスを知る必要があるかというと、どこに問題が生じているかを焦点化できる
という事があげられます。

この考え方のプロセスを知っておかないと、作業療法プログラムを立てるときに
対象者はどこに問題点を抱えているのかが分からなくなってしまいます。

この順序を知らないと、今起きている「現象」だけに注目してしまい、
「これじゃない、あれじゃない、じゃあ結局何が根本的な問題なんだ?」と
「思考の迷路」にハマってしまうんですね。

このプロセスを知るという事は、問題点という目的地を探り当てる
「地図」の役割を持っていると私は考えています。

実習生も臨床に出ても、作業療法士にとって大切な考え方だと思いますよ。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。