脳梗塞後の離床についての基礎知識(ラクナ梗塞編)




こんにちは。作業療法士のトアルです。

脳梗塞といっても、「ラクナ梗塞」「心原生脳梗塞症」「アテローム血栓性脳梗塞」の
3つのタイプがあり、リハビリ介入時に注意すべきポイントがあります。

また、急性期、回復期、維持期など各ステージでも注意すべき点は異なります。

今回は、急性期における「脳梗塞後の離床についての基礎知識」について解説します。

脳梗塞後の離床での基本的な注意点

3つの脳梗塞のタイプがありますが、最も気を付ける所は「血圧の低下」です。

虚血性病変であることと、脳血流の自動調整能の破綻があるために、
脳血流が低下すると急激に病態が悪化するリスクがあります。

このガイドラインに従い離床を進める必要があります。

ポイントとして脳梗塞急性期では収縮期血圧>220㎜Hgまたは拡張期血圧>120㎜Hgを上限とし、
血圧を高めに維持するようにします。

ラクナ梗塞の治療

ラクナ梗塞の治療薬の方針は2つあります。

1.「血圧のコントロール」 → 降圧薬
2.「抗血小板療法」 → 抗血小板薬

の2つです。

血圧コントロールは理解しやすいですよね、文字通り降圧剤を使用し血圧をコントロールします。

「抗血小板療法」とは何かと申しますと、
出血が生じない程度に血小板機能を低下させることで、
血栓が生じるのを抑制・予防する薬剤です。

血小板の働きが強くなると、血が固まりやすくなり血栓ができやすくなります。
これを防ぐ働きを持っているんですね。

ラクナ梗塞後の離床

ラクナ梗塞の場合、梗塞後の症状が軽微であることが多いです。

穿通枝など細い血管での梗塞のため、運動麻痺や感覚障害は軽度であることが多く
意識障害や高次脳機能障害はあまり見られません。

梗塞部位が小さいため自分で「動ける」ケースが多くあります。

しかし、麻痺や感覚障害は少なからずあるためバランスの機能が低下しています。
離床の際には「転倒・転落」に注意が必要です。

リハビリでは「動けるから大丈夫かな?」と思うことも多いのですが、
気を抜くと転倒するリスクが常にあります。
起立訓練・移乗訓練・歩行訓練時は絶対に目を離さないようにしましょう。

 

BADの場合の離床

BADでは脳梗塞発症後、徐々に神経症状が進行することがあります。
このケースの場合は無理に離床することは避けた方が賢明です。

理由としては離床で脳血流の低下が生じ、状態が悪化する可能性が高くなるためです。
この場合は、主治医に報告し離床時期について検討するようにしましょう。

 

ラクナ梗塞のリハビリでの評価

ラクナ梗塞は症状が軽度なことが多いため、積極的な離床を進める必要があります。
可能であれば、早期の病棟内ADLの獲得が望ましいです。

ラクナ梗塞後のリハビリ評価をまとめると、以下の3つになります。

1.バランス評価
2.病識の有無 (元の認知機能)
3.運動耐容能

を確認する必要があります。

バランス評価を行う理由は、軽度とはいえ運動麻痺や感覚障害があり転倒リスクは高いため
「動ける」と患者さん本人が認識していても、バランスが低下していることは結構あります。

そのため病識の有無の確認は必要です。高齢の患者さんも多く潜在的に認知症の可能性もあり、
元の認知機能を家族などから聴取する必要もあります。

また、いざ病棟内の歩行開始となった場合でも、原疾患・合併症の影響により、
運動耐容能が低下していることもあります。

既往に循環器・呼吸器系の疾患がないかを確認し、病棟内歩行が実用的かを
評価する必要があります。

1.ラクナ梗塞後のバランス評価

立位・歩行訓練でのバランスの評価が必要になってきます。

運動麻痺が軽度で、静的バランスである座位が安定していても、
動的バランスである立位・歩行が不十分で容易に転倒することがあります。

これら座位・移乗・立位保持・歩行評価方法として「BBS(Berg balance scale)を使用します。
「BBS」はバランス機能評価の1つになります。

もし、評価でカットオフ値に満たない場合は(得点44点以下)転倒リスクが高いです。

安全面に配慮して介助歩行にする、車いす移動にするなど検討するようにします。
移動方法については病棟で看護師との情報共有も必要になります。

また、機能改善が予測されるのであれば、患者さん本人へ回復程度に応じて
移動手段を検討していくと説明が必要になります。

2.ラクナ梗塞後の病識の有無の評価

上でも述べたのですが、ラクナ梗塞では高次脳機能障害での「病態失認」とは違い、
運動麻痺・感覚障害が軽いため自覚症状に乏しい場合が多いです

起立・移乗などで動きにくいことで始めて運動麻痺に気が付くこともあります。

入院して、すぐの時期ではベッド上動作は可能なため
「運動麻痺に気付くことができない」ケースがあります。

対応の方法としては患者さんの心理面や転倒リスクに配慮しながら、
少し難易度が高い動作をしてもらうことで、症状を理解してもらえることもあります。

難易度の高い例として

下肢平行棒・手すりを使用しての起立訓練・ステップ訓練・歩行訓練
上肢ボタンをしめる、ファスナーを上げる、新聞をめくる など

症状の理解があれば、なぜ介助が必要なのか納得してもらう材料にもなります。
中には高齢で元々認知機能が低下している方もいます。

認知機能の評価として「HDS-R」「MMSE」などの評価や
病棟での様子家族からの聴取を行います。
病棟などでのルール順守が不十分で転倒リスクが高いと考えられる場合は介助が必要です。
介助の方法など病棟の看護師の方と情報共有は必要になります。

 

ラクナ梗塞後の運動耐容能の評価

既往の疾患・合併症により「運動耐容能」が低下していることも考えられます。

リハビリでの運動耐容能の評価の方法として
「修正Borgスケール」「6分間歩行テスト」(6MWT)
などがあげられこれらの評価を行うことで活動レベルが明確になります。

ラクナ梗塞発症後に心不全や誤嚥性肺炎を合併する方もいるため、
各疾患の治療の進捗状況を確認しながら、離床を進めていきましょう。

 

まとめ

ラクナ梗塞は症状が軽度なことが多く積極的に離床を進める必要があります。

可能なら早期の病棟内ADLの獲得が望ましいです。
そうすることで合併症の予防、廃用症候群の予防を行うことができます。

ですが、麻痺や感覚障害が軽微でボディイメージが病前とは異なっており、
転倒するリスクが高いと考えられます。

そのため、病棟ADLについては介助する看護師・介護士と情報共有を行って、
移動方法や介助が必要なADL動作についての検討をする方が望ましいと思います。

この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。