作業療法士が「鍵つまみ・側つまみの基礎知識」について解説!




こんにちは、作業療法士のトアルです。

前回は「指腹つまみ動作の基礎知識」について解説させて頂きました。

今回は「鍵つまみ・側つまみの基礎知識」ついて解説させて頂きます。

このつまみの把持の呼び方は色々あります。

例えば、「横つまみ」「側方つまみ」などですが、
ここでは「鍵つまみ」で統一したいと思います。

鍵つまみの特徴

「鍵つまみ」は、つまみ動作の中でも最も強い力を発揮できます。

見ていただくと分かるのですが、「鍵」を使用するときの動作で、
鍵の開け閉め、紙やカードなど扁平なものを把持するときに見られるつまみです。

少し、専門的にいうと、手指を軽く握り、母指の腹側と示指の橈側部で
対象物を把持する様式です。

 

鍵つまみの運動と筋肉

上でも述べたように「鍵つまみ」は母指のIP関節の軽度屈曲させて、
母指の指腹と示指の橈側部で対象物を押さえます。

母指の力源として「長母指屈筋」の力と「母指内転筋」の補助が必要になります。

長母指屈筋はIP関節の屈曲に母指内転筋は内転の方向へ力を向けますので、
土台である示指は尺側の方向にかかります。

示指は尺側の方に力がかかるのですがMP関節が屈曲位であるため、
側副靱帯が働き関節はある程度の安定性※1を持ちます。

ですが、これにも限界があるため、ある一定以上の力が加わった場合は、
側副靱帯だけで安定性を保てません。

示指を橈側方向に押し返すだけの筋力が必要になるんですね。
この役割を担うのが「第1背側骨間筋」になります。

健常の方でも代償動作として、「長母指屈筋」ではなく、
母指のIP関節を中間位にして「母指内転筋」を使い「鍵つまみ」ができます。

※1 MP関節の側副靱帯はMP屈曲で緊張度が上がるので左右にブレにくくなります。

 

「鍵つまみ」とフローマンテスト

臨床でのテストとして「フローマンテスト」というのがあります。
ご存知の方も多いと思いますが「尺骨神経」の損傷の有無を調べる検査になります。

フローマンテストを行った場合に尺骨神経に損傷があると、
「鍵つまみ」の動作のなかでは母指の内転方向への補助動作が障害されます。
(母指内転筋は尺骨神経支配)

その代償として「長母指屈筋」(正中神経支配)で母指のIP関節を強く屈曲させて
保持しようとします。

そうすると、フローマンテストでは母指のIP関節の屈曲が大きくなる様子が観察されます。
もう少しわかりやすくいうと健側に比べて親指が立ちます。

また、示指を橈側方向に保つように働く「第1背側骨間筋」の補助も受けられないため
示指のMP関節は尺側の方向へ傾いてしまいます。
(第1背側骨間筋は尺骨神経支配)

側つまみの特徴

「側つまみ」は日常的にはあまり使用されない把持の方法です。

わかりやすい表現だと、喫煙者の方がタバコをもつような指と指の間に
挟むつまみの動作になります。

母指は動作に関与せず、力は弱く正確性にも欠けるのですが
母指切断者にとっては、この部位で代償動作をとることが多くなるそうです。

 

側つまみの運動と筋肉

「側つまみ」は手指は軽度屈曲位から伸展位を保ち、
2本の手指で対象物を挟む動作です。

「側つまみ」の多くは示指と中指の側部で行われており、
「第1掌側骨間筋」「第2背側骨間筋」が作用しています。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は「鍵つまみ・側つまみの基礎知識」について解説させて頂きました。

前回・前々回に引き続き「つまみ動作」について解説させて頂きました。

解剖学・運動学を理解するのは大変ですが、実際に起きている動作(現象)から
読み解いていけば理解はしやすいかなと思います。

この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。