リバーミード行動記憶検査(RBMT)の特徴・評価・解釈について作業療法士が解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

今回は「リバーミード行動記憶検査(RBMT)の特徴・評価・解釈」
について記事にさせて頂きたいと思います。

この検査を臨床の現場で行ったことがない作業療法士の方も多いはず。

「やり方がわからないから不安…」
「検査キットについている付属品が多いから大変そう…」

私自身もそうでした。初めて検査キットを見ると尻込みするんですよね。

私がこの検査を初めて行ったのは実習の時で、その時のバイザーにアドバイスを受けながら
検査したことを覚えています。

ですが検査は、ほとんどバイザーの先生がやっていて、私はほぼ傍観者モードでした…。

そのときテキパキと検査をこなすバイザーの先生をみて、
「この人すごいなぁ、自分もできるようになるのかな」とバイザーへの尊敬の念と、
自分の未熟さに不安を覚えたものです。

ですが、就職し臨床の現場に出れば、自分でやらなければなりません。
初めは先輩のフォローが付くんですが、ダメ出しの嵐で凹んでしまいました。

私の経験から言わせてもらうと、「神経心理学検査」を覚える場合で一番いい
学習方法は「ロールプレイ」をすることだと思います。

話せる同期や先輩を捕まえて練習相手になってもらう事です。

初めは上手くいかないんですが、それでいいんだと思います。

その都度フィードバックを貰えますし、聞き方のコツや時間配分が段々と掴めてくるはずです。

一度やり方を覚えれば「なんだこんな感じでやればいいのか」と余裕も出てきます。
初めは失敗してもいいやっていうくらいの気持ちで取り組むのが上達のコツだと思いますよ。

前置きが長くなりましたが、以下に解説をしていきます。

リバーミード行動記憶検査とは?

リバーミード行動記憶検査(RBMT)はイギリス・オックスフォードの
「リバーミードリハビリテーションセンター」で日常記憶の障害を発見し、
また治療による変化を発見するために開発されたテストバッテリー(Wilson et al.,1985)で
2002年に日本語版が標準化されました。

リバーミード行動記憶検査の特徴として、通常の検査では評価されることのなかった、
展望記憶(近い将来の約束や実行の記憶)が評価可能です。

リハビリ介入の効果判定のため、繰り返しの評価を行うことを前提に作成されており、
練習効果を排除できるように同じ難易度の4つの並行検査が用意されています。

 

検査の内容

リバーミード行動記憶検査は1.氏名、2.持ち物、3.約束、4.絵、5.物語(直後・遅延)、6.顔写真、
7.道順(直後・遅延)、8.用件、9.見当識の9つの下位項目からなります。

1.氏名の記憶
顔写真を2枚見せ、それぞれ氏名を記憶させます。
時間を置いてから顔写真のみで氏名を答えさせる。

2.持ち物の記憶
被験者の持ち物を1つ(または2つ)預って隠します。
他の検査終了後に思い出させて返却を要求させます。

3.約束の記憶
最初に約束事と答えを決めます。20分後にアラームが鳴るようにセットして、
アラームが鳴ったら決められた質問をするようにします。

4.絵の記憶
絵を見せて、時間を置いてから内容を質問するようにします。

5.物語の記憶
短い物語を聞かせ、直後と時間経過後に2回、物語の内容を再生させます。

6.顔写真の記憶
顔写真を見せて、あとからどれが正しい顔写真か答えさせます。

7.道順の記憶
部屋の中で施験者が道順をたどって見せます。
時間を置いて被験者が正しい道順をたどれるかを見ます。

8.用件の記憶
検査7の途中で、他の用事を直後と時間を置いて2回行わせます。

9.見当識
日付、場所、知事名を質問します。

 

検査時間と採点について

所要時間は30分前後で、採点では「標準プロフィール得点」「スクリーニング得点」
2種類を算出できるようになっています。

「標準プロフィール得点」とは「日常生活での障害の度合い」をみる得点となり、
下位項目の難易度を考慮して0~2に3段階で評価したもので満点は24点になっています。

「スクリーニング得点」とは「記憶障害全般」の得点を表しており、採点の際は
標準プロフィール得点が2の場合のみ1と換算し、満点は12点となっています。

 

リバーミード行動記憶検査(RBMT) のカットオフ値と結果の解釈

「標準プロフィール得点」(満点24点)「スクリーニング得点」(満点12点)とで診断されます。
診断の目安は下記のようになっていますが、年齢ごとでカットオフ値が設定されていて、
高齢者ではボーダーラインが低くなります。

リバーミード行動記憶検査の「標準プロフィール得点」でのカットオフ値は下記のようになります。

年齢ごとのカットオフ値は以下の表のようになっています。

スクリーニング点合計(12点)のカットオフ値を5/6に設定した場合は、感度81.8%で
特異度96.2%と高い鑑別力を持つことが報告されています。

軽度のアルツハイマー型認知症46名と健常者46名を対象としてリバーミード行動記憶検査を
行った研究があります。条件として「年齢」「教育歴」をマッチングさせています。

この研究では、標準プロフィール得点で13/14をカットオフ値とした場合、
アルツハイマー型認知症患者の98.8%と健常者の95.7%を正しく分類できました。

また、スクリーニング得点で5/6をカットオフ値とした場合は、
アルツハイマー型認知症患者の97.8%と健常者の95.7%を正しく分類できたことを示しました。

これらの研究は上記の表の根拠となる指標になります。

さらに標準プロフィール得点とスクリーニング得点とともに行動観察による日常生活上の
健忘症状の程度と有意に相関し、日常生活記憶の評価に有用であることが示されています。

まとめ

今回は「リバーミード行動記憶検査の特徴・評価・解釈」について記事にさせて頂きました。

冒頭に私のリバーミード行動記憶検査の経験談を書かせていただきましたが、
複雑そうな検査でも、覚えてしまうとどうってことないと感じます。

まずは尻込みせずにやってみる事です。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。