生活行為向上マネジメント(MTDLP)について解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

皆さんは「生活行為向上マネジメント(MTDLP)」について知っているでしょうか?

MTDLP (生活行為向上マネジメント)とは、日本作業療法士協会が2008年に
国民に分かりやすく地域包括ケアに貢献できる作業療法の形を示すために開発したものです。

一般の方からは「“作業”療法の”作業”ってなに?」という質問を受けます。

「応用動作と社会適応のための能力回復を行うリハビリ職だよ。」と説明しても、
大体の人の反応は「…そうなんだ?…。」と深くは突っ込んできません。
(新しい定義が決まるまではこのように説明してました。)

一般の方にとって、理解しにくい概念である「作業療法」を積極的に
発信をしていくために新しく作り出されたツールがMTDLPなのだそうです。

簡単にまとめると以下のようになると考えています。

・作業療法士の取り組みを説明する新しい枠組み
・作業療法の標準的な形を一般の人に示すためのもの

それでは以下に詳細を書いていこうと思います。

生活行為向上マネジメントとは

対象者にとって「意味のある作業」に焦点を当てた支援プロセスのことです。

このプロセスは作業療法士が臨床で思考する過程を示しているとされ、
「作業療法」や「作業」と言う言葉の代わりに「生活行為」という言葉を使っています。

「作業」という言葉よりも、「生活行為」という言葉のほうが認識のズレが少なく、
より多くの人に理解しやすいためだそうです。

生活行為マネジメントをツールとして活用すると、
作業療法士の思考過程が書式に従って書いていくだけで完成します。
また規定の書式を用いることで「家族」「地域」の方と情報を共有できるように考案されており、
対象者に関わる方が、マネジメントに参加できるというメリットがあります。

 

生活行為向上マネジメント実施のプロセス

作業療法士の支援プロセスを具体化したものということで、
生活行為向上マネジメントには、5つのメインシートがあります。

・生活行為聞き取りシート
・生活行為課題分析シート
・生活行為アセスメント表
・生活行為向上プラン演習シート
・生活行為申し送り表

これらを作業療法士の介入方法である
「1.聞き取り」「2.評価」「3.介入プログラムの立案」「4.再評価~申し送り」
の4つの過程に分けていきます。

それぞれ

1.聞き取り → 生活行為聞き取りシート
2.評価 → 生活行為アセスメント表+生活行為課題分析シート
3.介入プログラムの立案 → 生活行為向上プラン演習シート
4.再評価~申し送り → 生活行為申し送り表

という流れになります。
この4つの流れを集約したものが、各シートになっています。

 

生活行為聞き取りシート

1.聞き取り (生活行為聞き取りシートの作成)
聞き取りを行う際には「生活行為聞き取りシート」を使います。
これを使い、本人や家族が望むことの聞き取りを行います。

もし、目標が思い浮かばない場合は、「興味・関心チェックシート」を使います。
興味・関心チェックシートを利用する事で、具体例が視覚化されやすく
目標が見つけやすくなると思います。

 

生活行為課題分析シート+生活行為課題分析シート

2.評価 (生活行為アセスメント演習シートの作成+生活行為課題分析シート)
「聞き取り」で聴取した本人の望む生活行為を目標とし、空欄に記入します。
制限している要因をICFに基づきアセスメントしていきます。
(ICFコードがマニュアルに載ってますのでご心配なく)

次に、現状での「能力(強み)」「予後予測」を大まかにアセスメントします。
そして、対象者や家族と再度相談し「合意した目標」を決定していきます。

生活行為アセスメント演習シートと同時並行で、生活行為課題分析シートを作成します。

対象者の望む生活行為に関連した要因だけでなく、改善の余地のある
ADLやIADLを見落とさずに把握する必要があるため、
2015年度よりBI(バーゼルインデックス)、FAI、老研式活動能力指標が盛り込まれており、
これも評価する必要があります。

 

生活行為向上プラン演習シートの作成

3.介入プログラムの立案 (生活行為向上プラン演習シートの作成)
「評価」によって問題点を明確にしたら、生活行為向上プラン演習シートを使い、
支援計画を具体的にどうやって実施していくか考えていきます。
・『基本プログラム』
→ 心身機能に関するアプローチ。
・『応用プログラム』
→ 具体的生活行為のシュミレーションを伴う活動と参加に関するアプローチ。
・『社会適応プログラム』
→ 環境因子によって影響を受ける生活行為を、その環境に適応できるように働きかける、
  または環境因子そのものに対するアプローチ

次に、生活行為を実践するために必要な、
『企画・準備力(PLAN)』『実行力(DO)』『検証・完了力(SEE)』
について記入していきます。

『企画・準備力(PLAN)』
生活行為を行うには、「いつ、だれと、どこで、どのような方法で、なんの準備が必要か」
を事前に考える能力が必要になります。

『実行力(DO)』
生活行為を実際に実施するうえで必要となる能力。

『検証・完了力(SEE)』
生活行為を行いながら、上手く進んでいるかを検証し、
間違いやよりよいやり方に途中で気付いて修正する能力。
終了できたかを確認し、次の実施につなげる能力。

分析したそれぞれの力、本人の現状能力について「できる」「できない」で評価します。
※生活行為向上マネジメントシートではこの分析の段階が省略されています。

続いて、誰がどのように支援を行うか詳しく決めていきます。
・対象者
・家族
・支援者
など、役割分担が明確に決められおり、何をすべきなのかがはっきりしています。

 

生活行為申し送り表の作成

4.再評価→申し送り (生活行為申し送り表の作成)
一定期間介入後に再度、評価を行い、継続するか終了するかの判断を行います。
この支援プロセスが上手く行っているなら、それを継続させ、
修正が必要であれば再度内容を見直していきます。

まとめ

作業療法士が臨床で行う考え方が整理されており、
リハビリでの目標やプランを立てやすいと感じました。

しかし、課題として、

・書類が多く、書き込むのに時間がかかる。
・急性期など入院期間が短い中ですべて行う事できるのか。

などがあげられると思います。

内容的には素晴らしいもので、作業療法士を目指す実習生が使うと、
臨床において思考過程を学ぶのにとても有効な評価だと思います。

長くなりましたが、お付き合い頂きありがとうございます。
ご参考にしていただければ幸いです。