急性期ではこれを押さえて安心!「呼吸困難」の評価法の4つを解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

前回は、「息切れ」と「呼吸困難」の違いについてお話させて頂きました。
また、「呼吸困難」と「呼吸不全」での対応の違いについても紹介させて頂いています。

↓前回の記事です。参考にどうぞ。

今回、取り上げたい事なんですが、呼吸困難の具体的な評価法についてです。

評価法なんですが、ざっと上げると以下の4つ

・Fletcher-Hugh-Jones分類 (F-H-J分類)
・修正MRC息切れスケール (mMRC)
・Visual Analogue scale (VAS)
・修正Borgスケール

色々あって、新人の頃は何を使えばいいか分かりにくいですよね。

勤務先の病院・施設ごとで使用している呼吸困難についての評価法は様々だと思います。

今まで共通認識で使用されていた評価法を急に変えるのは難しいと思いますが、
国際基準で使用されている評価法についても知って欲しいという思いを含めて
紹介したいと思います。

Fletcher-Hugh-Jones分類(F‐H‐J)について

まずはFletcher-Hugh-Jones分類です。

Hugh-Jones(ヒュー・ジョーンズ)分類と呼ばれることが多いそうですが、
正確な名称は『Fletcher-Hugh-Jones分類』。

この分類を提唱したのがFletcherさんで、紹介したのがHugh-Jonesさんらしいです。
現在は国際的にあまり使用されていない評価法のようです。

理由としては、F-H-J分類で2度→3度→4度の評価の歩行距離の幅が広すぎるため、
臨床で該当しない患者さんが多いということです。

表でみると明らかなんですが、F-H-J分類3度での必要歩行距離が1.6㎞(1マイル)なんですね。
1㎞単位で歩ける方は臨床場面では非常に少ないと思います。

特に呼吸器疾患の既往を持つ高齢の方であればなおさらでしょう。
こういう理由もあり、中々臨床では適応できないんですね。

逆に、F-H-J分類4度の『休みながらでなければ46m(50ヤード)以下の歩行もできない』の場合
屋内移動での生活が中心の活動量の少ない方であれば、適合する方も多いです。

BI(バーゼル・インデックス)で自立とされる歩行距離も45m。
少し誤差はあるものの、F-H-J分類の4度の距離と大体同じ位ですよね。

話を戻しますが、F-H-J分類だと少々臨床で使いにくいという現状があるようです。

国際的な基準では、以下に説明する『修正MRC息切れスケール』の使用が
推奨されているようです。

修正MRC息切れスケールについて

修正MRC息切れスケール(mMRC)では歩行距離が最大100m、歩行時間も数分と
臨床的にも適合した評価となっています。

また、日本呼吸器学会COPDガイドラインでも使用されている評価法になります。

実はこの『Fletcher-Hugh-Jones分類』と『修正MRC息切れスケール』は
『間接的評価法』と呼ばれるもので、問診などで医療スタッフが行う評価方法なんですね。

日常生活や在宅において重症度を知るために用いられます。

次に紹介する『Visual Analogue scale(VAS)』 と『修正Borgスケール』は
患者さん本人が呼吸困難の程度や強度を測定する『主観的評価法』になります。

これは、安静時だけでなく、運動中や運動直後の呼吸困難を評価するときに用いられます。

 

Visual Analogue scale(VAS)について

Visual Analogue scale(VAS)の使い方についてですが、
水平、または垂直に100㎜(10㎝)の直線を引き、その両端に極端な呼吸の状態を示します。

例えば、一方の端に「まったく息切れがない」、もう一方の端に
「耐えられないほどの息切れがある」というように設定します。

そして、この直線状に現在の息切れの状況を、患者さんにマークしてもらいます。
息切れのない状態を始点として、マークしてもらった部分までが
何㎜だったかを計測して評価します。

 

修正Borgスケールについて

修正Borgスケールでは、垂直にひかれた直線を0~10に分類します。

それぞれの数値の箇所で、息切れの程度を「何も感じない」から「非常に強い」までを示し、
患者さん自身に呼吸困難の程度を数字で評価してもらいます。

修正Borgスケールの特徴として、再現性が高く、
同一患者さんの経時的変化の観測に有効とされています。

6MD(6分間歩行試験)や運動療法の効果判定に最適で、
短時間で簡単に評価できるところも便利になっています。

 

まとめ

今回は、急性期での「呼吸困難」の評価法について知るべき4つを解説させて頂きました。
作業療法でも呼吸器の患者さんを担当する機会も多いと思います。

呼吸状態の改善を評価するには、バイタル測定やフィジカルアセスメントも
重要ではありますが、本人の呼吸状態への自覚、治療者側からみた呼吸状態の評価も
患者さんの支援には必要と思います。

初めは難しいとは思いますが、それぞれの特徴や使い方を覚えていけば大丈夫です!

まずは、本人の呼吸状態を本人から聴取。
つまり『直接的評価』して、次に『間接的評価』という手順で行けばいいと思います。
もちろん、運動療法・作業療法後も同じ手順で評価を行っていきます。

この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。