転移と逆転移について作業療法士が解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

今回は「転移」「逆転移」について知識の整理をしたいと思います。

皆さんはこの2つの意味について知っているでしょうか?
まずはそれぞれの定義から紹介します。

まずは「転移」からです。

続いて「逆転移」についてです。

何となく概要はつかめたでしょうか?

少し噛み砕いていうと「転移」は患者さんが過去に起きた出来事を、セラピストとの関係性の中でその感情を再現させることで、「逆転移」は、セラピスト側の過去の出来事から起きた感情を患者さんで再現すること。

それでは以下に詳しく解説していきたいと思います。

転移とは?

「転移」と「逆転移」はユング派心理療法で、重要視されているものです。

「転移」というは、治療を受ける対象者がセラピストとの間に抱く「特別な感情」のことです。

この時の「特別な感情」というのは、対象者が過去に出会った人物との人間関係の中で生じた感情に近いものが再現されるといわれています。

例えば、過去に父親から暴力を振るわれ恐怖心が芽生えた場合や、
母親が自分に関心を持ってくれず、悲しい思いをした経験などです。

父親や母親を例にあげましたが、兄弟や友人や教師との間に生じた人間関係にも当てはまります。

対象者とセラピストの場合、顔を合わせてすぐにそのような感情は抱きません。
このような感情が生じるのはある程度の関係性ができてから生じるようです。

対象者とセラピストの関係性が段々と構築されていく中で、対象者は過去の経験と似ている所を重ね合わせて、今まで秘めていた感情を表出させていきます。

これが「転移」となります。

 

逆転移とは?

「転移」とは、対象者がセラピストに対して抱く特別な感情のことです。
「逆転移」は逆に「セラピストが対象者に対して抱く感情」になります。

関係性を築いていく中で、セラピスト側の過去の経験と無意識に重ね合わせて、
必要以上に避けてしまったり、怒りの感情を持ったり、ときには恋愛感情を抱いたりします。

こんな状態ではセラピスト側は中立な立場で治療を行えませんよね?

しかし、「逆転移はだれにでもありえる」ということを知っていて、
それに気付くことが出来れば対応は可能だと思うのです。

これに対応するには、自分自身の心の問題や考え方の癖を知っていなければなりません。

でないと、実際に逆転移が起こった時に冷静な対応ができないのではないかと思います。

ですが、対象者もセラピストも、心を持った「人間」です。
当然お互いに何かしらの影響を及ぼし合うのは自然なことになります。

問題は、その「転移」「逆転移」をどう扱うかということだと思います。

転移・逆転移を克服するには

人の感情というものは、理性でコンロトールできるほど簡単ではありません。

転移や逆転移が起こった場合は、感情を「なかったこと」にしてしまうのではなく、

「なぜそんな感情が出てきたのか」
「その感情は、過去に誰に対して向けられた感情と同じものなのか」

を突き詰めていくことが大切だと思います。

じつは、私も臨床の場面で「逆転移」が起きていたことがあります。
職場の先輩にちょこっと患者さんのことを愚痴ってしまったんですね。
そうすると「それって逆転移が起きてるんじゃない?」とズバッと指摘をもらいました。

「いやいや、そんなことはないよ」と思っていたのですが、思い返すと
そういえば今まで似たような経緯で入院してきた患者さんと接してきて、
思い込みで「またか…。」と思っていたフシがあります。

お恥ずかしい話ですが、根拠はないまま、自分はそんなことをしないだろう
と思っていただけに、目が覚める思いでした。

 

まとめ

転移・逆転移というのは無意識で生じる事が多く、自分自身のことを客観視して
いないと患者さんやご家族との関係性を壊しかねない危険な状態なんですね。

こんな時には、やはり相談できる相手を作っておいた方がいいのかと思います。
一人で抱え込むとストレスも溜まりますし、なにより個人の信頼や病院全体の信頼を失いかねない結果になることもあります。

私も人にアドバイスできるような立派な人格者ではないので、
常々気を付けたい所です。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。