福祉住環境コーディネーター2級は作業療法士の業務に活かせるのか?




こんにちは。作業療法士のトアルです。

以前の記事で「福祉住環境コーディネーター2級の勉強方法について解説」させて頂きました。

OTであれば、患者さんの住環境について情報収集していると思います。

ですが、2015年の作業療法白書によると、「物理的環境の調整・利用」を行っている割合は、
医療保険(身体障害領域)領域では29.2%、介護保険(身体障害領域)では21.2%になっています。

私個人の意見ですが、意外と少ない気がしました。

通常業務の兼ね合いで「退院前訪問」に行く機会が少ないなども関係しているとは思います。
急性期の場合は転院調整になることも多いですからね。

私の勤務している病院(急性期)でも、最近「退院前訪問」を実施する割合が増えていて、
経験上、実際に自宅に行かないと分からないことって多いなと思います。

段差を登るのにどれくらいの身体機能が必要なのかなど、模擬的な訓練はできるのですが、
自宅で本当にその動作ができるのか、手すりを設置するにしても、他に手段はないのか
など色々考えることは多いです。

病院勤務の場合、自宅での生活のイメージが掴みにくいというのがあり、
いつかは経験を積みたいと考えていました。

「福祉住環境コーディネーター」はその部分を補うという意味で取得していても
損はない資格だと思います。

「今は、病院勤務だけどゆくゆくは地域に出て作業療法をしていきたいな」という方には
必須の資格ともいえるかもしれません。

そのことも踏まえつつ、今回は「福祉住環境コーディネーターの役割」について
解説させていただきたいと思います。

福祉住環境コーディネーターの役割

 

福祉住環境コーディネーターとは、高齢者や障がい者に対し、できるだけ自立して、いきいきと生活できる住環境を提案するアドバイザー。
引用:福祉住環境コーディネーター検定試験HP

上述したように「福祉住環境コーディネーター」の役割は、高齢者の方や障害者がその人らしく生活できるように、住環境の側面から支援していく仕事になります。

福祉住環境コーディネーターの資格は医療・福祉の分野で活きてきます。

具体的な役割は3つあり、

1.高齢者や障害者の住宅内での問題点を調査する
2.日常生活上の不便・不自由さの改善
3.他職種と連携し高齢者・障碍者のQOLの向上を図る

これらの役割をしっかりと理解しておくことで、自宅で現在必要な問題点に対して、
素早く的確にアプローチできます。

 

1.高齢者や障害者の住宅内での問題点を調査する

福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障害者が、家の中での動作に不自由が生じていないかを調べます。

典型的な例でいうと「上がり框(かまち)が高い」「部屋の色々な場所に段差が多い」があります。

段差が高い場合や多い環境下では転倒リスクが高くなります。

転倒してしまうと、骨折や頭部外傷などを生じ、介護が必要になる可能性が高まりますよね。
それを未然に予防する必要があるのです。

福祉住環境コーディネーターの役割の1つとして、高齢者・障害者の生活を不便にしている
住宅環境を評価していくというのがあります。

特に高齢者の方は、自宅の中では長年の生活習慣が身についていて、仮に生活の不便・不自由を感じていても「これはしょうがないこと」と諦めていることが多いです。

福祉住環境整備のことを知らないため、この制度で解決できると思っていないことが多いのです。

まずは、そこに気づいてもらうことが福祉住環境コーディネーターの最初の役割と言えます。

認知症がある方の場合は、受け入れが難しい事も多いので、家族の方との協力も必要になってくるでしょう。ご家族に対して住環境整備を周知していくのも福祉住環境コーディネーターの役割になります。

 

2.日常生活上の不便・不自由さの改善

福祉住環境コーディネーターの役割の2つ目は、高齢者・障害者の生活上の不自由・不便さを
どうすれば解決できるのかを考え、改善策を提案することです。

例えば「床での生活様式から椅子・ベッドを使用した生活へ変更する」ことや「段差・階段の上り下りへのアドバイス(手すり設置・昇降の方法の指導)」など生活様式の変更を提案するのも役割の一つになります。

人の生活様式は本当に様々なので、高齢者・障害者の生活ニーズ、生活様式、動作方法などを十分に評価してから、解決策を提案する必要があります。

でないと、的外れな支援をしてしまったり、導入した手すりや福祉用具を使わないといった場合も考えられ、こちらが必要と思っても、本人が自宅では使わないというケースも考えられるのです。

在宅復帰を目指し、福祉用具などを支援する場合にも、経済的な負担は少なからず出てきます。

自宅で実用的でなければ無駄なお金を使う事になります。

できれば無駄な出費を抑えて本当に何が必要なのかを見極める必要もあるのではないかなと思いますよ。

 

3.他職種と連携し高齢者・障碍者のQOLの向上を図る

福祉住環境コーディネーターは、医師、看護師、リハビリ職、ケアマネジャー、介護福祉士、住宅設計者、施工業者、福祉用具業者など、在宅支援に関わる様々な職種の方と関わります。

これら全ての関係者から情報収集を行い、他職種同士の情報をうまく連結する役割があります。

そのためには、それぞれの職種の専門性や立場を理解しておく必要があり、幅広い分野の知識が求められ、それとともに、専門職同士を結び付け、仲介・調整する能力も大切になります。

他職種で意見が食い違った場合など、どのように折り合いをつけるのか、間に入って話をまとめることも福祉住環境コーディネーターの仕事の一つになってきます。

おわりに

今回は「福祉住環境コーディネーター2級は作業療法士の業務に活かせるのか?」を題材に「福祉住環境コーディネーターの役割」について解説させていただきました。

色々説明したのですが、福祉住環境コーディネーターの役割は、作業療法士の業務内容と被る部分がとても多いことがわかると思います。

実は福祉住環境コーディネーターの資格を取らなくても、国家資格である作業療法士の資格があれば、法律上は問題なく住環境整備はできます。

ですが、冒頭でお話したように、医療保険・介護保険領域で働いている作業療法士が実際に環境整備に携わるケースは意外に少ないのが実情です。

業務で常に住環境整備行う場合はいいのですが、その機会が少ないといざ自宅に帰るとなった場合に、後手に回ってしまい、本人や家族に具体的な対応策をアドバイスすることができませんし、ケアマネや施工業者に、どういった環境調整が必要なのか、福祉用具が必要になるのか伝える事も出来なくなります。

家屋調査に行く機会が少ないのは、ある意味では仕方のない事なのかもしれませんが、いつ何時に住環境整備に関わるケースが出てくるかはわかりません。

その時に慌てて準備不足になったり、後手に回らないためにも、自分の知識の棚卸をしておく必要があるのではないかなと個人的には思います。

特に住宅の建設・施工関連に関しては、現地に行って業者とやり取りをするなど経験を積まないと覚えられない事がたくさんあります。

なので、病院勤務でも機会があれば積極的に家屋調査にいくのがいいのではないかと思いますよ。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。