こんにちは。作業療法士のトアルです。
前回は感覚検査(表在感覚・深部感覚)の概要について、話させて頂きました。
今回は、表在感覚の各検査の具体的な方法について記事にしていこうと思います。
※深部感覚は別の記事で書きます。
Contents
なぜ感覚(知覚)検査をするのか?
前回の記事も復習もかねて1つ確認です。
「感覚検査」はなんのために行うのでしょうか?
これは、手の感覚障害がある場合について考えてみると分かりやすいかもしれません。
例えば、温度覚がないと、手で熱いものを触っても気づかず、火傷をするかもしれません。
痛覚がないと傷がついても気付かず傷から菌が侵入し、感染症を引き起こす可能性もあります。
触覚がなければ、物を手で扱う時に、素早く正確に扱えない事もあります。
また、位置覚がないことで手の位置が分からず、
色々な場所にぶつけたりすることもあるでしょう。
「感覚障害」は、運動麻痺とは違い他人から見ても分からず、
本人でも気付かないことが多いので、障害があると推測される場合は
必ず検査が必要になってくるのです。
表在感覚ー痛覚の検査法
【痛覚検査に必要な道具】
痛覚検査に必要な道具は「つまようじ」です。
簡単に手に入り、安全で使い捨てもできるため、痛覚検査に良く用いられます。
以前は、安全ピンや針も使用されていましたが、軽い刺激でも傷を作ったり、
感染の可能性もあるため、今は使われていません。
障害の範囲や境界を検査したりするには、ルレットやピン車が便利ですが、
上記の理由からあまり推奨はできません。
痛覚検査の基本的な手順
初めに、患者さんに検査道具をみせ、四肢・躯幹の痛覚の検査をすることを説明します。
患者さんの肢位は『仰臥位』が望ましいです。
検査の順序は上肢→躯幹→下肢と順序よく進めていきます。
刺激の程度の強さは、「尖っているものでつつかれている」ことがわかる
強さで皮膚を軽くつつきます。
患者さんが痛がるような強さは強すぎるため適切ではありません。
健常の同側部位を「10点」とし、感覚障害がある側も同じ程度で触れ、
その部分の点数がどの程度かを評価します。
表記の方法は色々あると思いますが、例えば、右前腕部に感覚障害があれば、
”(右/左):5/10点”というように表記すると分かりやすいですよね。
意識障害や応答のできない患者さんの場合、やや強めの刺激を加えると、
手足を動かしたり顔をしかめたりするので、痛覚のスクリーニングになります。
JCSなどの疼痛回避にも使われるので有名ですよね。
意識障害のある患者さんにおける痛覚刺激の与え方
意識障害がある場合は、以下の4つで疼痛の評価を行います。
1.眼窩上縁を指腹で圧迫する
2.爪床をペンで圧迫する
3.胸骨を示指のPIP関節(第2関節)を曲げ圧迫する
4.顎関節(コメカミ)を指腹で圧迫する
急性期では意識障害を呈している患者さんも多いので覚えておくと役に立ちます。
感覚異常の範囲を詳細に検査する
大まかに感覚異常の範囲がわかったら、さらに詳細に検査を行います。
このとき以下の2点に注意が必要です。
1.末梢神経の分布に一致しているか?
2.皮膚分節(デルマトーム)に一致しているかを確認します。
このとき、どこに感覚障害が出ているのかを詳細に記載するために、
皮膚分節や末梢神経支配の記入されたヒトの図に記入するといいかもしれません。
また感覚異常と正常の境界についてですが、
・正常と異常の境界が線を引いたようにはっきりしているか
・徐々に感覚が変わるか
を調べていきます。
「痛覚」検査の記載方法
痛覚の判定基準は以下の3点です。
・痛覚の程度(鈍麻・脱失)
・異常感覚の有無(痛覚過敏)
・遅発痛の有無(疼痛の遅延)
痛覚の鈍麻は「痛覚鈍麻」、痛覚の消失は「痛覚脱失」です。
痛覚の過敏は「痛覚過敏」といいます。
「遅発痛」は、何秒遅れれば、遅発痛になるという明確な基準は決まっていないようです。
反応に遅延がある場合は何秒程度、時間測定が難しい場合は
「遅発痛の疑い」と記載すればいいと思います。
記載方法は正常を10点とし、以下のように「鈍麻」「脱失」を分けます。
・10点 正常
・9点~1点 鈍麻
・0点 脱失
異常感覚については、患者さんが訴えている主訴をそのまま記載します。
例えばですが「焼けつくようにジンジンする」などです。
一般に「痛覚鈍麻」では、『障害部から正常な部分に向かって検査』していきます。
また「痛覚過敏」では逆に『正常部より障害部に向かって検査』していきます。
検査する方向が異なる理由としては、境界で刺激が減弱したり、増強するため
どこから障害が生じているのか境界を決めやすいためです。
表在感覚ー温度覚の検査法
【温度覚検査に必要な道具】
検査にはガラスの試験管などを用います。
ですが、リハビリの臨床d試験管を用意するのが大変ですし、割ったら大変ですよね。
なので、私は手に入りやすいペットボトルなどを使用しています。
これに温湯と冷水を入れたものを用います。
温湯は40~50℃くらいで冷水は10℃くらいが適切です。
それ以上の高温や、それ以下の低温では,痛覚を刺激してしまいます。
温度覚検査の基本的な手順
初めに、患者さんに検査道具をみせて、四肢・躯幹の温度覚の検査をすることを説明します。
患者さんの肢位は『仰臥位』が望ましいです。
検査の順序は上肢→躯幹→下肢と順序よく進めていきます。
ペットボトルを皮膚に密着させ、温度が伝わるまで3秒ほど待ってから判定します。
温度覚は皮膚の部位による差が大きいので、必ず対称部を同一の状態で検査して比較します。
感覚異常の範囲を詳細に検査する
大まかに感覚異常の範囲がわかったら、さらに詳細に検査を行います。
痛覚と同様に、末梢神経の分布や、デルマトームに一致しているかを確認します。
このとき、どこに感覚障害が出ているのかを詳細に記載するために、
皮膚分節や末梢神経支配の記入されたヒトの図に記入するといいかもしれません。
また感覚異常と正常の境界についてですが、
・正常と異常の境界が線を引いたようにはっきりしているか
・徐々に感覚が変わるか
を調べていきます。
「温度覚」検査の記載方法
温度覚の判定基準は以下の3点です。
・温度覚の程度(鈍麻・脱失)
・異常感覚の有無(温度覚過敏)
・遅発痛の有無(疼痛の遅延)
温度覚の鈍麻は「温度覚鈍麻」、温度覚の消失は「温度覚消失」です。
痛覚の過敏は「温度覚過敏」といいます。
記載方法は正常を10点とし、以下のように「鈍麻」「脱失」を分けます。
・10点 正常
・9点~1点 鈍麻
・0点 脱失
異常感覚ががある場合は、その時の患者さんの発言をそのまま記載します。
高齢者の方や末梢循環不全がある患者さんでは、明らかな神経障害がなくても
温度覚が鈍麻していることがあります。
表在感覚ー触覚の検査法
【触覚検査に必要な道具】
触覚の検査には、ティッシュペーパーなどディスポーザブルなものを用います。
その場合はティッシュの先端を細く整えて用います。
以前は毛先をほぐした筆などを用いていましたが、現在では感染予防の点から
行われていないことが多いです。
触覚検査の基本的な手順
初めに、患者さんに検査道具をみせて、四肢・躯幹の触覚の検査をすることを説明します。
患者さんの肢位は『仰臥位』が望ましいです。
検査の順序は上肢→躯幹→下肢と順序よく進めていきます。
このとき、圧覚を刺激しないようにできるだけ軽く触れます。
健常の同側部位を「10点」とし、感覚障害がある側も同じ程度で触れ、
その部分の点数がどの程度かを評価します。
表記の方法は色々あると思いますが、例えば右前腕部に感覚障害があれば、
”(右/左):5/10点”というように表記すると分かりやすいですよね。
もし、一点での接触でわかりにくいときは、少し「なでる」ようにしてみます。
なでるときにも、以下のような原則があります。
・四肢では長軸と平行に行う
・胸部では肋骨に平行に行う
・常に同じ長さをなでる
ようにします。
触覚の感覚異常の確認
触覚の感覚異常の範囲を確認するためには2つの方法があります。
・2か所を比較しながら鈍いところを明らかにする方法
・『閉眼』させ、触れたらすぐに『はい』と答えさせる方法 になります。
2か所の比較では『左右差』『上肢と下肢の差』『近位部と遠位部の差』に注意し、
大まかな感覚異常の部位の範囲を検査します。
患者さんを閉眼させる意味なんですが、どこに刺激が加えられたのか、
見えないので視覚情報を排除できより客観性が得られるためです。
感覚異常の範囲を詳細に検査する
大まかに感覚異常の範囲がわかったら、さらに詳細に検査を行います。
痛覚・温度覚のように末梢神経の分布や、デルマトームとの一致を確認します。
このとき、どこに感覚障害が出ているのかを詳細に記載するために、
皮膚分節や末梢神経支配の記入されたヒトの図に記入するといいです。
また感覚異常と正常の境界についてですが、
・正常と異常の境界が線を引いたようにはっきりしているか
・徐々に感覚が変わるか
を調べていきます。
触覚検査の記載方法
触覚の判定基準は以下の2点です。
・触覚の程度(鈍麻・脱失)
・異常感覚の有無(触覚過敏)
触覚の鈍麻は「触覚鈍麻」、触覚の消失は「触覚消失」です。
触覚の過敏は「触覚過敏」といいます。
記載方法は正常を10点とし、以下のように「鈍麻」「脱失」を分けます。
・10点 正常
・9点~1点 鈍麻
・0点 脱失
「鈍麻」は「軽度」「中等度」「重度」とありますが、
明確な区分は決まっていないようです。
また、臨床では「しびれ」や触れただけで疼痛を訴える患者さんもいます。
これらに対しても評価が必要で、自発的に生じる感覚異常なのか、
それとも、刺激が与えられたときに別の感覚が生じるのかを鑑別する必要があります。
”外界からの刺激がなく自発的に生じる異常な自覚的感覚”を「異常感覚」、
”外界からの刺激がそれとは異なった感覚”を「錯感覚」といいます。
おわりに
今回は「表在感覚の検査方法」について解説させて頂きました。
次回は「深部感覚の検査方法」について取り上げたいと思います。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。