こんにちは。作業療法士のトアルです。
脳梗塞の基礎知識(病態編)の続きになります。
脳梗塞患者さんのリハビリ介入で注意することは、
1.脳血流と血圧管理
2.脳圧のコントロール
になります。
基本的にリハビリ訓練で直接的に脳血流を再開させることは不可能です。
リハビリでは患者さんの状態を確認し、リスク管理を行いながら
早期の離床を進めていくことがリハビリでの役割になります。
Contents
脳血流の維持について
脳梗塞のリハビリ介入時に注意するのは「脳血流の維持」です。
脳血流を維持するには「ペナンブラ」への理解が必要です。
急性期のリハビリの役割として「早期離床」があげられます。
ペナンブラへの血流を維持し続ける方法を取りながら離床を行う必要があります。
脳梗塞で血圧を高く設定するのはペナンブラへの血流を確保するためです。
脳血流を維持するには?
血流が乏しい領域へ血流を維持するためには「血圧を下げないこと」です。
脳には血流を維持する「自動調整能」がありますが、脳梗塞など脳組織の損傷で
自動調整能も破綻します。
脳梗塞により自動調整能が破綻すると、脳血流はダイレクトに血圧に依存します。
そのため、血圧が低下すると脳血流も低下し脳梗塞が拡大するリスクがあります。
※「自動調整能」については「脳血流自動調整能」について解説の記事を参照してみて下さい。
脳梗塞急性期での血圧管理
では、具体的にどの位の値で血圧管理を行えばいいのでしょうか?
脳卒中ガイドライン2015によると脳梗塞の場合
「収縮期血圧220㎜Hg以上、または拡張期血圧が120㎜Hg以上の場合に降圧を行う」
とされています。(グレードC1)
もし、収縮期血圧220㎜Hgを超えていても、臨床では積極的に降圧を行わないのが一般的です。
回復期~慢性期の血圧管理
脳梗塞の治療開始後1~3ヶ月をかけて徐々に降圧をすることが推奨されています。
目標としては140/90㎜Hg未満を目安に考えます。
※両側頸動脈の高度狭窄症例や主幹動脈閉塞症例を除きます。
これは脳血流自動調整能は脳卒中の発症後、1ヶ月程で回復するとされているためです。
脳圧コントロールの必要性
頭蓋内の容量は一定です。
「脳実質」「脳脊髄液」「血液」が一定の割合で存在することで均衡が保たれています。
※詳しくは脳梗塞の基礎知識(病態編)を参照にしてみて下さい。
以下の記事では脳循環を維持するポイントについて解説します。
脳実質における脳圧コントロールについて
脳実質が損傷すると脳浮腫が生じ、相対的に脳血流や脳脊髄液が減少します。
そのため、脳浮腫の軽減を行う必要があります。
脳浮腫を軽減する薬剤は「抗浮腫剤」とよばれます。
以下の表を参考にしてみて下さい。
血液量のコントロール
脳内に血液量が多い場合も脳圧の均衡を崩してしまいます。
ただし、脳内の組織に栄養と酸素を供給する必要があるため、
脳血流を維持する必要があります。
血液量で注意するのは「静脈灌流」です。
静脈血が頭蓋内でうっ滞すると血液量が増え脳圧が高くなります。
離床時のヘッドアップの角度
リハビリでの離床時に覚えていて欲しいことがあります。
それは「ヘッドUPの角度」です。
角度を15~30度で維持することで、頭蓋内圧の静脈灌流が促されます。
脳圧が高いと考えられる場合、ヘッドアップを行う必要があります。
ただし、角度を45度以上にすると心臓からの脳血流量が低下する
可能性があり注意が必要です。
その他の注意点として、頸部屈曲位でも静脈灌流が滞ります。
そのため頸部屈曲位にしないポジショニング調整が必要になってきます。
脳圧上昇は咳嗽・いきみでも生じる
実は「咳嗽」を生じることでも脳圧が上昇します。
脳圧が非常に高くなっている場合には注意が必要になってきます。
具体的に言うと、リハビリ介入時に咳嗽が頻回に見られる場合は、
医師・看護師などに報告が必要になります。
また「いきむ」ことでも、腹圧が上昇し、血圧が上がります。
いきまず排便できるように、薬剤での調整が必要な場合があり、
リハビリでもADL訓練時にいきまないように指導が必要になります。
まとめ
今回は「脳梗塞治療についての基礎知識」について解説させて頂きました。
急性期での脳梗塞患者さんでは
「脳血流の維持」「脳圧のコントロール」が大切になってきます。
離床の際には血圧の確認・フィジカルアセスメントに注意するようにしましょう。
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。