作業療法士が「指腹つまみの基礎知識」について解説!




こんにちは、作業療法士のトアルです。

皆さんは「紙イタチ」って知ってますか?

動物ではなくて、
「紙を扱っているときに刃物で切ったような切り傷がいつのまにかできる現象」
のことだそうです。

何年か前に、国語辞典に載せたい言葉を全国の中高生から募った企画で、
最優秀作品に選ばれたうちの一つだそうです。

作者は中学1年生で、昔からある言葉「かまいたち」をもじってるんですね。

誰しも一度は味わったことがあるハッとする「あるある」ですが
中学1年生ながら、すごいセンスだなと感心しました。

手指の感覚って、日頃はあまり意識しない部分ですが、傷があると結構嫌なもんです。

それはさておき、本題へ行きましょう。
今回は「指腹つまみ」ついて解説させて頂きます。

指腹つまみ

「指腹つまみ」はつまみ動作のなかで、日常的に多く使用される動作です。

指腹つまみには使う指の種類により大きく2つに分けられます。

「母指-示指」で行う「2点つまみ」
「母指-示指-中指」で行う「3点つまみ」

になります。

日常的にどういう動作で行われるかというと「書字動作」「食事動作」があります。

書字動作の具体例としては、鉛筆・ボールペン・チョークを使用した動作、
食事動作では、1日3回は行う「箸」を使った動作になります。

作業療法士であればこういった訓練への意識は高いと思います。

 

指腹つまみに使われる筋肉

「指腹つまみ」に使われる筋としてはどのようなものがあるのでしょうか?

指腹つまみでは、細かい目的物を把持しながら指を屈曲・伸展させることができます。

自分で動かしてもらえれば分かりやすいと思いますが、
左右どちらかの母指・示指でOKサインをしてみて下さい。

その指を「指尖つまみ」「指腹つまみ」と交互(前後)に動かしてみて下さい。

この屈伸運動中、母指では「長母指伸筋」「長母指屈筋」が働いており、
示指では側索を介して「手内在筋」が働いています。

指腹つまみに使われる正中神経

健常の方であれば、先ほどの「OKサイン」はできると思います。
これには正中神経支配の筋群が関与しています。

正中神経に支配され、指腹つまみに使われる筋肉には
「長母指屈筋」「母指球筋」「深指屈筋」があります。

正中神経を損傷してしまうと「長母指屈筋」「深指屈筋」の2指が十分に機能せず
対立運動が困難になってしまいます。

これは近位の正中神経麻痺である「円回内筋症候群」でもそうですし
遠位の正中神経麻痺である「手根管症候群」の場合にも生じます。

これらを検査するテストとして、パーフェクトOなどがあります。

もし、正中神経麻痺があれば、母指・示指できれいなOの形ができなくなり、
「涙型」のような形になります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は「指腹つまみの基礎知識」について解説させて頂きました。

「指腹つまみ」は日常的に使われるつまみ動作の中で使用頻度が高いものです。
「つまみ」の基本的な動作ともいえるので、
障害されると様々なADL動作に支障をきたします。

急性期でよく見るのは、手指の骨折や神経麻痺などです。

骨折であれば安静度上での理由で使用が制限されますので、部位に応じて
利き手の交換や自助具の使用、片手でできる動作などを指導していきます。

神経麻痺に対しては、筋力や感覚障害の有無を見ながら、
負荷を調整し筋力訓練、感覚入力訓練を行っていきます。

いずれにしてもケースバイケースではあるので、一般論になります。

作業療法士であれば、病前のADLを確認して

「本人が何を望んでいるのか」
「何をしたいのか」

に着目して、訓練に優先順位をつける必要があります。
正直、ここが一番難しく、やりがいのある所でもあるんですけどね。

この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。