手の「横アーチ」について作業療法士が解説(近位横アーチと遠位横アーチ)




 

こんにちは。作業療法士のトアルです。

「手のアーチ」とは、骨構成そのもので、
これが破綻すると「手」の機能が発揮できなくなります。

アーチの種類には3種類あり
・横アーチ
・縦アーチ
・対立アーチ

があります。

「手のアーチ」の機能の中では動きで変化する「動的なアーチ」と、
ほぼ変化しない「静的なアーチ」の2種類に分けられます。

それでは、今回は「手の横アーチ(近位横アーチと遠位横アーチ)」について
解説させて頂きます。

それでは、以下に説明していきたいと思います。

 

横アーチについて

横アーチといってもさらに2種類に分けられます。
1つは「近位横アーチ」もう1つは「遠位横アーチ」になります。

「近位横アーチ」は手根骨の遠位の部分を指します。

手根骨の遠位部ですが、骨の名称で言えば、
「大菱形骨」「小菱形骨」「有頭骨」「有鈎骨」になります。

「遠位横アーチ」は中手骨骨頭部分、つまりMP関節の部分になります。

まずは「近位横アーチ」から解説させて頂きたいと思います。

 

近位横アーチ

「近位横アーチ」は上でも説明しましたが、遠位手根骨の列で構成されています。

遠位手根骨間の関節は平面関節になっていて、強固な靱帯で結ばれています。
つまり、この部分での可動性はそんなにないということになります。

また、その両端の骨は「屈筋支帯」で支えられています。
端の1つが大菱形骨の「大菱形骨結節」で、
もう一つが有鈎骨の「有鈎骨鉤」になります。

この部分の機能としては、骨の構成、つまり横のアーチを維持する役割になり
変化せず一定の構造を保ちます。

つまり「静的なアーチ」に分類されます。

この「屈筋支帯」で炎症症状が生じると「手根管症候群」が生じます。

 

遠位横アーチ

「遠位横アーチ」は中手骨骨頭部分でアーチのことで
MP関節部分で構成されています。

この部分は「深横中手靱帯」という靱帯でつながれていますが可動性があります。
つまりアーチの機能では「動的なアーチ」に分類されます。

横アーチの可動性が何に関係するかというと、
手の平のくぼみを深く作れるかということになります。

アーチのカーブが狭くなれば、くぼみは深くなりますし、
アーチのカーブが広くなれば、くぼみは浅くなります。

もう少し専門的にいうと、CM関節の動きでアーチの湾曲度が
変化していくということになります。

水をすくう場合や茶椀などの器を持つ場合でみると
この横アーチ(遠位横アーチ)の湾曲度合いは
「母指と環指-小指のCM関節の動き」により調整されます。

このときに重要なのは、環指-小指のCM関節の動きであり
母指は補助的な役割をします。

 

横アーチが障害されるとどうなるか?

この環指-小指の部分は「尺側動的区分」とよばれ、
ここが障害されると横アーチ(遠位横アーチ)の湾曲度を変化させることができずに
「にぎり動作」が障害されます。

尺骨神経障害では「内在筋」の作用が低下し、
横アーチが崩れ、手掌が平坦化してしまいます。

正中神経障害では母指の対立運動ができなくなり、
器を持つ際の母指の補助が受けられなくなります。

ADLでの食事動作や手を使用する職業では大きな障害になるといえます。

 

まとめ

今回は「手のアーチ(近位横アーチと遠位横アーチ)」について解説させて頂きました。

この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。