レジスタンストレーニングの運動処方について解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

前回は「レジスタンストレーニングの効果」について解説させていただきました。
で、今回はその続きである「レジスタンストレーニングの運動処方」について
解説しようと思います。

運動処方のポイント

運動を処方するときには4つの重要なポイントがあります。

➀運動の頻度 (Frequency)
➁運動の強度 (intensity)
➂運動の時間 (time or duration)
➃運動の種類 (type of exercise)

になります。
これら4つの頭文字を合わせて「FITT」と呼ぶこともあります。

 

運動の頻度

「運動の頻度」について、レジスタンストレーニングの基本的は以下のようになっています。

運動の順序でいうと

というのが効果的とされています。

トレーニングする筋の部位ですが、大きな筋群を1回に全て行っても良いし、
部分ごとに分け数回に分けて行っても良いとされています。

大きな筋群として、以下のように分類されています。

ただし、これは健常者に当てはまる場合で、高齢者の場合は少し異なっています。

以下にアメリカスポーツ医学会(ACSM)の高齢者向けのガイドラインを掲載しておきます。

ACSMのガイドライン以外にも、
「運動の頻度」を設定する方法があります。

この場合は1日や1週間を単位で日常の活動レベルや
身体活動量・日常の運動習慣に応じて変えていくようにします。

以下に例を上げてみます。


・運動習慣がない人     → 週に3~5日(20~30日分/日)
・最低限の生活活動をする人 → 週に3~5日(30~60日分/日)
・運動習慣のある人     → 週に3~5日(30~90日分/日)

例では、運動習慣を例にとっていますが、運動習慣がある場合は
1回あたりの運動時間を増やして調整するようにしていきます

急性期の現場では入院患者さんは「最低限の生活活動をする人」場合が多いです。
なので、2単位(40分)以上の運動を行うと、翌日まで疲労感を訴えることが多いので
運動をする時間には気を付けましょう。

運動の強度

「運動の強度」ですが弱すぎると効果は表れませんし、強すぎると続かなくなったり、
ケガにつながる場合があります。

では、どのように指導していけばよいのでしょうか?

一般的な評価の方法としては2通りあります。
1つ目は「筋力」を目安にする方法、2つ目は「心拍数」を目安にする方法があります。

 

筋力を指標にする場合

「筋力」を指標にする場合は「RM法」を使います。
健常者と高齢者では基礎筋力などが違うため別々に考えていきます。

【健常者の場合】
健常者の場合、レジスタンストレーニングで基本的な「運動の強度」は以下のようになります。

【高齢者の場合】
高齢者の場合だと、以下のような内容に変更になります。

健常者と違い、やや負荷を落としても有効な効果が期待できるとされています。

負荷を落とす理由としては、高齢者になると運動習慣がないために
運動自体を嫌がったり、過度な負荷でケガをする危険があるためです。
疲労時には休憩や、終了を考えることも必要になってきます。

1日に行う回数としては以下のようになっています。

以前の記事「レジスタンストレーニングの目的」なども参考にしてみて下さい。

 

心拍数を指標にする場合

もう一つは「心拍数」を指標にする方法です。よく使われるのは以下の2つです。

・「自覚的運動強度(RPE)」(ratings of perceived exertion)
・「カルボーネン法」


【自覚的運動強度(RPE)(ratings of perceived exertion)とは?】

あてはまる6~20ポイントに10をかけると、その時の心拍数に相当します。
このRPEと心拍数の相関は認められています。

高齢者の方やカルボーネン法などの計算が難しい場合に使います。


【カルボーネン法とは?】

カルボーネン法とは1分間の安静時心拍数から自分の目標とする心拍数を割り出し、
運動強度の目安にします。

この「カルボーネン法」で目標心拍数を割り出すには、
まず「最大心拍数」を求めるようにします。

「最大心拍数」の求め方は簡単で「220-年齢」になります。
その数字を以下の式に当てはめます。

カルボーネン法における運動強度は以下の表を参考に決定します。

高齢者の場合は、35~55%が適応とされています。
さらに「息を弾ませる程度」「軽く話ができる程度」がよいとされています。

数値で評価できれば客観的な評価ができ、
「呼吸の状態」や「会話の頻度」などで観察から評価することもできます。

これはケースバイケースになると思います。

運動の時間

「運動の時間」についてですが、これは「運動の頻度」と同様に対象者の
運動習慣や活動のレベルによってセラピストが調整する必要があります。

高齢者の場合、時間が長いと疲労してしまうことがあるので、
適宜確認してからトレーニングを行う方がいいでしょう。

疾患によっては投薬状況を見ながら行う必要があります。
骨折後などの場合、鎮痛剤を服薬した後が望ましいですね。
(当たり前ではあるんですが…たま~にいるんですよ。飲んでない方が…)

運動の種類

「運動の種類」の選択ですが、対象者の何を改善させたいかで
トレーニングの種類を選択する必要があります。

「有酸素性運動」なのか「無酸素性運動」なのか。
「静的収縮(静止性収縮)」なのか「動的収縮(求心性・遠心性)」なのか。
はたまた「関節可動域訓練」なのか「ストレッチング」なのか。

当たり前といえば当たり前ですが、自分が何を目的にリハビリを
行っているかを明確にしましょう。

 

まとめ

今回は「レジスタンストレーニングの運動処方」について
記事にさせて頂きました。

冒頭でも述べましたが、運動処方には4つの重要なポイントがあります。

➀運動の頻度 (Frequency)
➁運動の強度 (intensity)
➂運動の時間 (time or duration)
➃運動の種類 (type of exercise)

です。

これらをしっかり踏まえた上で、対象者の動作の何が不十分なのか、
それを改善するにはどのようなトレーニングが必要なのかを吟味する
必要があります。

目的もなく、やみくもに訓練しても「それ、なんのためにやってるの?」
と突っ込まれるのは確実です。

しっかりと目的をもってリハビリ訓練をしましょう!

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。