こんにちは。作業療法士のトアルです。
前回は「手の横アーチ」について解説させて頂きました。
簡単に復習すると、「横アーチ」には2種類あり
「近位横アーチ」と「遠位横アーチ」があります。
「近位横アーチ」は靱帯で強く結ばれておりアーチの構造は変化しません。
つまり「静的なアーチ」になります。
逆に「遠位横アーチ」は母指から小指までの中手骨頭で構成されており
可動性が高いアーチです。つまり「動的なアーチ」になります。
特に重要なのは母指と環指・中指の部分でこの部分が障害されると
「にぎり動作」が上手くできなくなります。
話を戻しますが、今回は3つあるアーチの2つ目
「縦アーチ」について解説させて頂きます。
Contents
縦アーチについて
「縦アーチ」を理解するには手を横から見る方が分かりやすいです
ほとんどの参考書では橈側側から見た図になります。
「中手骨」「基節骨」「中節骨」「末節骨」の4つの骨構成になっており、
母指・示指・中指・環指・小指それぞれ1本ずつ存在するものです。
(母指は中節骨はありません。)
手を机の上に置いた安静肢位を観察すると、
MP関節を頂点に山のような稜線を描くと思います。
これが、いわゆる「縦アーチ」なのですが、
この山のような形は「外在筋」と「手内在筋」の自然張力で成り立っています。
「縦アーチ」は手指の動きにより変化する「動的なアーチ」になります。
一応各アーチが「動的」なのか「静的」なのかの表をのせておきます。
![](http://toaruot.com/wp-content/uploads/2018/09/9d20ba483fc2e80ae1f0df9fb8a31a1c.jpg)
中手骨付近では「掌側骨間筋」「背側骨間筋」「虫様筋」などの「手内在筋」が
あるため、これらの筋に障害が生じると機能低下に直結してしまいます。
そのため安静にしていては評価するのが困難で、
動かしてみて初めて評価ができる「アーチ」であるといえます。
この「縦アーチ」の変化を見てみる分かりやすい例としては
手のひら大のボールを掴んだ時と、
手の中に握り込むことができるボールを掴んだ時に
観察できると思います。
(具体例でいうと野球ボールとピンポン玉とかになると思います。)
ボールという球形の形状でも、大きさが違えば「縦アーチ」の屈曲の度合いが
かなり変化するのが分かると思います。
つまり「にぎり動作」を行うために「縦アーチ」は大きく関係してきます。
上でも述べましたが「縦アーチ」を構成する要素として
「外在筋」と「手内在筋」の張力のバランスがとても重要な役割を果たしています。
これらが破綻するとどうなるのでしょうか?
イントリンシック・マイナス手とイントリンシック・プラス手について
「縦アーチ」では4つの「中手骨」「基節骨」「中節骨」「末節骨」が
動的に変化しながら目的とする動作を行います。
多くは「にぎり動作」になるのですが、
これには「外在筋」と「手内在筋」の協調性が必要になってきます。
それぞれが障害された時に生じる特徴的な手の形があります。
「手内在筋」が障害された場合を「イントリンシック・マイナス手」
「外在筋」が障害された場合を「イントリンシック・プラス手」
といいます。
以下に、それぞれについて解説していきます。
イントリンシック・マイナス手
イントリンシック・マイナス手は「手内在筋」が障害された時に生じます。
手の形としては「MP関節過伸展-PIP関節屈曲-DIP関節屈曲」になります。
何かをひっかくような形になりますね。
では、なぜこのような形になるのでしょうか?
イントリンシック・マイナス手の機序
「手内在筋」が麻痺した状態で、指を開こうとすると指はうまく開きません。
指を開くという動作は「手内在筋」と「外在筋」である手指の伸筋群が協調して働きます。
しかし、「手内在筋」が麻痺しているため
MP関節部では手指の外転ができず、「外在筋」である手指の伸筋群のみが働き
MP関節は伸展傾向を示します。
「手内在筋」はPIP関節やDIP関節を伸展させる作用もありますが、
これが麻痺している場合は伸展させるだけの筋力がなくなり、
手指の屈筋群も優位になります。
そのためPIP関節やDIP関節は屈曲位になります。
イントリンシック・プラス手
「イントリンシック・プラス手」は「外在筋」が障害された場合に生じます。
手の形としては「MP関節屈曲-PIP関節伸展-DIP関節伸展」になります。
次にこのような形になる理由を説明します。
イントリンシック・プラス手の機序
「手内在筋」が短縮したり、過緊張状態になる場合に出現します。
つまり「手内在筋」が優位に働きすぎた状態のことになります。
「手内在筋」はPIP関節やDIP関節を伸展させる作用がありますが、
筋が短縮や過緊張していると、筋の最大長が短くなり、
強制的にPIP関節・DIP関節が伸展位になります。
さらにMP関節屈曲位のときには通常、指伸筋が作用し手指全体が伸展しますが
「手内在筋」が緊張しているため伸展するのが困難になります※1。
※1 MP関節屈曲位で指伸筋が働いて、手指全体が伸展するには手内在筋が緩んでいる必要があります。
逆にMP関節伸展位で手指全体を伸展するには指伸筋が緩み、手内在筋が働いている必要があります。
まとめ
今回は「縦アーチ」「イントリンシック・マイナス手・イントリンシック・プラス手」について
解説させて頂きました。
この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。