リハビリテーション栄養はなぜ重要なのか?について作業療法士が解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

今回は「リハビリテーション栄養」について解説させていただきたいと思います。

実は、少し前まで急性期のNSTラウンドの担当だったんですね。
そういうこともありまして、自分の復習もかねて記事にしたいと思います。

リハビリテーション栄養の定義

リハビリテーション栄養とは

と定義されています。

ICFはリハ領域で、対象者の生活機能を全人的に評価できるツールとして使用されていますが、
この中には実は栄養関連の項目も含まれています。

ICFで全体像の評価を行い「では、この対象者の方の栄養状態はどうなっているの?」
考えることが「リハビリテーション栄養」の一歩といえます。

 

リハビリテーション栄養の重要性

医療の進歩の影響で平均寿命も延びてきましたが、入院してくる方も高齢の方が増加しています。

私は急性期病院に勤めていますが、入院の直接の原因となった疾病だけでなく、
入院前からサルコペニアなどの筋肉量の低下や嚥下障害、認知症などにより、
食事や水分摂取量が少なく、栄養不良、脱水症状の状態を呈して入院してくる方は多い印象を受けます。

入院してから原因疾患の治療の後、回復するためには「食べて動く」ことが
必要になってきます。

食べなければ、タンパク質を取ることができず、急速に低栄養化が進み、免疫機能は低下します。
また、動かなければ、タンパク質から骨格筋を合成できず、筋肉は衰えていってしまいます。

分かりやすい例が、肺炎の患者さんです。

肺炎の患者さんの場合、食事がとれず免疫機能が低下してしまいます。
そうすると感染症を繰り返し、動かないことで肺の換気機能が低下したり、
骨格筋の廃用をきたします。

感染を繰り返した結果、寝たきり状態になり最悪の場合は死に至ります。

これを予防するためには、チームによる栄養管理とリハビリが重要になってきます。

また、リハビリの対象者の方には低栄養が多いことが報告されています。
回復期リハ病棟における調査では、入院約4割が低栄養といわれており、
低栄養の場合は脳卒中の嚥下障害から回復しにくいことが分かっています。

低栄養の対象者の方の、栄養状態を考えずにリハビリだけを行っても
十分な効果が得られません。それどころか、逆効果になることさえあります。

的確な栄養アセスメントを行い、個人に応じたリハ栄養管理を行うことで、
身体機能改善や、ADL、QOL の向上が期待できます。

リハスタッフ(PT・OT・ST)としてどのように関わるか

リハビリテーション栄養の実践には、
「リハビリから見た栄養(生活機能やリハプログラムを考慮した栄養管理)」と、
「栄養から見たリハビリ(栄養状態や摂取量栄養状態を考慮したリハプログラムの実施)」
双方が必要です。管理栄養士の場合は前者の、リハスタッフは後者の視点を持つことは大切といわれています。

リハビリテーション栄養の主な内容は、

1.低栄養が不適切な栄養管理下におけるリスク管理
2.リハビリの時間と負荷が増加した状況での適切な栄養管理
3.筋力、持久力などをより改善させる栄養管理

の3つがあります。

しかし、いきなり「栄養の事を知って、評価してね」と言われても、
何をどうすればいいのか、全然わからないと思います。

私もNSTラウンドの担当を任されるまでは、正直なところ栄養管理のことを
あまり理解していませんでしたし、知識もありませんでした。

私の場合、NSTラウンドに参加することで、リハスタッフが他職種に何を伝えればいいのかを
理解できるようになりましたし、他職種がリハビリで何をしているのかを知ってもらう
きっかけになると思っています。

ただし、皆さんがNSTに関われるかというと、そうではないと思います。
そういう場合はどうすればいいのでしょうか?

答えとしては「病院の管理栄養士の方に相談してみる」というのが
ベストではないでしょうか?

管理栄養士さんに相談する機会というのは、実は結構あると思います。

例えば、自分が担当している対象者の方が

「活気がないな」
「すぐ疲れるといって困るな」
「筋力が中々ついてこないな」

という場合はないでしょうか?

上記の訴えがある場合って、リハビリへの拒否があったり、
リハビリ訓練の結果がついてこなかったりで難渋しますよね。

こういった症状がある場合「低栄養」である可能性が高いです。
BMIAlbの値、直近の食事の摂取量を一度見てみて下さい。

もし、基準値よりも下回っている場合や食事摂取量が少ない場合は
栄養状態が悪い可能性があります。こういうときに、管理栄養士さんに相談してみましょう。

栄養の補助になる食品の提供など対策を一緒に考えてくれるはずです。

↓病院で栄養補助食品として提供されるものには以下のようなものがあります。

 

まとめ

今回は「リハビリテーション栄養」について解説させていただきました。

リハビリで身体機能改善の訓練をしていても、栄養摂取が悪けれれば、
当然、筋力はついてきません。独りよがりではどうにもならないんですね。
特に、経験年数の少ないリハスタッフでは、そうなる傾向が多いと思います。

そんな時には、一端立ち止まって対象者の方の栄養状態を見てみましょう。

身体機能を改善するにはリハビリだけでは難しい場合も多いんです。
このことを知っていて欲しいと思います。

栄養の事で困ったら、やはり栄養管理のプロである管理栄養士さんに
相談するのがいいのではないかと思いますよ。

きっと力になってくれるはずです。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。