低栄養と口腔機能低下について作業療法士が解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

今回は「低栄養と口腔機能低下」について解説させていただきたいと思います。

骨格筋では廃用性筋萎縮が生じる事は有名です。
では、摂食嚥下を担う筋群では廃用性筋委縮は生じるのでしょうか?

今回はそれをテーマに記事にしていこうと思います。

口腔機能の3大機能と主な役割

口腔機能は「嚥下機能」「構音」「呼吸」の3大機能を担っています。

他にも

「味覚により食べることを楽しむ」

「唾液、咀嚼による消化の第一段階」
「鋭敏な感覚で危険なものを体内に入れない防御機能」
「噛み合わせによる平衡感覚を保つ」
「口元で表情構成や感情表現をする」

などの役割があります。

3大機能はいずれも、咀嚼筋、嚥下筋、口腔周囲筋、呼吸筋などの
筋肉のスムーズな協調運動によってその機能が発揮されます。

一方、筋肉量減少、筋力低下、機能低下が見られるサルコペニアでは
「加齢」の他にも「不活動」「低栄養」「疾患」と全部で4つの原因が
考えられます。

つまり、低栄養状態が継続し、全身の筋肉のサルコペニアが進行すると口腔の3大機能に関連する
筋肉もサルコペニアが進行して「咀嚼嚥下」「構音」「呼吸」の機能低下が起こります。

そして、この機能低下により、さらに低栄養が進行するという悪循環になってしまいます。

 

誤嚥性肺炎はサルコペニアが進行して生じる

口腔機能の低下により様々な問題が起こります。

例えば、誤嚥性肺炎などがそうです。

咀嚼筋・嚥下筋のサルコペニアが進行すると、栄養摂取に必要である
咀嚼・嚥下機能が直接的に低下していきます。

これらの筋が低下すると誤嚥のリスクが徐々に出てくると考えられています。

ですが、誤嚥したからといってすぐに肺炎になるわけではありません。

通常の場合だと、咳嗽反射などで体外に異物を排出したり、
免疫機能により細菌に抵抗するなどを行っています。

しかし、低栄養状態ですと、呼吸筋の筋力低下での咳嗽力の低下や
免疫機能の低下により、感染に対する抵抗性が低下します。

そうすると、徐々に体力が消耗され やがて37°程度の発熱が
見られるようになります。

誤嚥性肺炎の症状としては

「水分や食事でむせる」
「痰が絡んだような咳をしている」
「倦怠感が強い」
「呼吸が苦しそう」
「色の濃い痰」

などの症状が見られたがあり、これらが生じた場合は注意が必要です。

症状がなく、体が感染に対抗できるうちはいいのですが、
さらに誤嚥が繰り返されれば、結果として誤嚥性肺炎になります。

つまり、誤嚥性肺炎を起こすということはサルコペニアが進行している
と考えられるのです。

口腔機能低下は低栄養と関連性をもつ

最近では、誤嚥性肺炎に対する治療のスタンダードを見直す機運が
高まってきているそうです。

「禁食」「安静臥床」という従来の治療を行い、これに十分な栄養管理が行われていなければ
「不活動」「低栄養」「疾患」というサルコペニアの原因が揃ってしまうことになります。

これにより、口腔機能ばかりか、 全身の筋肉量減少、筋力低下、機能低下が生じます。

口腔機能は低栄養と深く関連し、口腔機能の低下を放置すると低栄養が進行するばかりではなく、
様々な問題が起こります。

 

まとめ

今回は「低栄養と口腔機能の低下」について解説させていただきました。

簡単にまとめると、低栄養状態による筋力低下は、四肢の骨格筋だけでなく、
咀嚼・嚥下筋にも及びます。これにより必発するのが誤嚥性肺炎になります。

これを防ぐには、低栄養状態に陥る前に他職種の連携により対象者を拾い上げる事、
誤嚥を起こさないような環境づくり(ポジショニングや口腔ケア)、
STによる摂食嚥下機能療法が重要とされています。

患者さんが高齢であったり、脳卒中やパーキンソン病、COPDの既往がある
場合は要注意になります。

自分の患者さんに心当たりはないでしょうか?

もし、心当たりがあれば、STさんに相談してみるのがいいかもしれません。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。