「急性期病院でのリハビリテーション栄養の考え方」について作業療法士が解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

今回は「急性期病院でのリハビリテーション栄養」について
解説させていただきたいと思います。

回復期でのリハビリテーション栄養については参考となる指標も多く出てきています。
ですが、急性期でのリハビリテーション栄養となると指標が乏しいのが現状です。

手術・疾患の影響を受けるので、ほぼ低栄養状態となるのですが治療が最優先となるため、
どうしても「リハビリテーション栄養」は後手に回りがちなんですね。

急性期の段階ではどのように「リハビリテーション栄養」に取り組めばよいのでしょうか?
今回はその事について記事にしたいと思います。

急性期病院では低栄養状態はほぼ起こる

急性期病院の入院患者さんの多くは、手術や疾患により侵襲の影響を受けます。
そのため、入院初期から筋タンパクの消耗が生じることを知っておく必要があります。

高齢者の方では、入院前より加齢でのサルコペニアを呈している方も多く、
入院後にさらに「活動」「栄養」「疾患」での二次性サルコペニアになる可能性が高くなります。

つまり「入院前のサルコペニア」+「入院後の二次性サルコペニア」により
かなりの割合で筋力低下が生じてしまいます。

ですが、急性期病院では救命や疾患の治療が最優先であるために、栄養管理やリハビリは
治療に左右されることも多くなります。

脳卒中の患者さんですと、意識障害や嚥下障害により経口摂取ができない場合もあります。
また、高次脳機能障害により注意障害やある場合や、抑うつ傾向で意欲の低下がみられると、
十分な食事量が摂取出来ないこともあります。

誤嚥性肺炎では誤嚥のリスクもありますし、開腹術後は食事に制限が掛かる場合もあります。

もちろん、点滴などで栄養を付加することもできますが、身体機能を改善できる量には達しない
ことが多く必要栄養量としてはどうしても限界があります。

急性期で低栄養はほぼ、必発するといっても過言ではないかもしれません。

では急性期病院で「リハビリテーション栄養」を実施するにはどうすればいいのでしょうか?

 

急性期病院での栄養リハビリテーションの考え方

急性期病院で「リハビリテーション栄養」を考えるには、以下のキーワードを知ることが
とても大事かなと個人的には考えています。

それは「筋タンパク質の消耗を最小限に抑えること」です。

急性期病院では、侵襲により筋タンパク質を分解し消耗され筋力が低下することは避けられない、
であればその低下を最小限に食い止めようという考え方になります。

では、どういう流れで筋タンパク質の消耗を最小限に抑えていけばよいのでしょうか?

 

急性期病院でのリハビリテーション栄養の進め方

まず大前提となるのは「適切な栄養管理」です。これを実施する必要があります。

栄養という材料が乏しければ、筋タンパクを合成することはできませんし、
これはリハスタッフだけで解決できる問題ではありません。

なので、病院の管理栄養士さんと、患者さんの栄養状態について情報を共有する必要があります。

治療の経過と共に、ある程度の栄養状態の改善が見込めてくると、
筋肉量や筋力の維持・増強を図るためにリハビリが必要になってきます。

急性期での治療を終えて、回復期、在宅や施設などの維持期に移行することを考えると、
急性期での「リハビリテーション栄養」を考慮することは重要になります。

順調に治療が進んで、回復の経過を上り調子で辿っている場合はいいのですが、
中にはリハスタッフと管理栄養士だけでは問題を解決することが難しい患者さんもいます。

そういう場合は、多職種で連携するNSTを活用することが必要になってきます。

NSTは医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師など関わる職種も多く、それぞれの専門分野があり
困ったことがあれば相談にのってくれると思います。

 

まとめ

急性期病院は在院日数が短く、患者さんの入れ替わりが激しいです。

また、病気の発症直後で全身状態が不安定なことも多く、高度医療を必要とする患者さんもいます。

この状況の中で「リハビリテーション栄養」を進めるには、リハや管理栄養士だけでは不十分で、
医師、看護師、薬剤師含めたチームで情報を共有し「なぜ栄養状態が改善しないのか?」という
問題点を解決していく必要があります。

栄養状態の改善は急性期病院だけで全て完結できるわけではありません。

そのため、次のステージである回復期病院や退院後の受け皿となる地域の医療機関や介護施設への
適切な情報提供を行うことが必要になります。

私が初めてNST担当になった時は「急性期だけで機能改善も含めて全て解決しなければ」という
思い込みがありかなり悩んだ事があります。

ですが、急性期での「リハビリテーション栄養の目標」を

「筋タンパクの消耗を最小限にする」

「地域へ患者さんの栄養状態についての情報を橋渡しする」

ということを知ってからは、かなり気が楽になったことを覚えています。

なんでも気負い過ぎないことが大切で、急性期、回復期、維持期において
やるべき事を具体的に知ることが大事なんですよね。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。