「骨格筋ポンプ作用と呼吸ポンプ作用」について作業療法士が解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

今回は「骨格筋ポンプ作用と呼吸ポンプ作用」について解説させて頂きたいと思います。

ポンプ作用というと心臓のポンプを思い浮かべる方が多いかもしれません。
ですが、心臓の収縮力のみでは全身へ血液を送り、回収するには不十分です。

よくよく考えると、こぶし大の大きさの臓器が人体の隅々まで血液を供給するのは難しいはずです。

それを補うのが、今回説明する「骨格筋ポンプ作用」「呼吸ポンプ作用」になります。

動脈と静脈の違い

人の身体には網目のように血管が走っており、血液が循環することで恒常性が維持されています。
血液循環を知るためには、まず「動脈」「静脈」の違いを知る必要があります。

血液を循環させる血管には「動脈」「静脈」の二種類があります。

・動脈→心臓から「出る」血液が通る血管
・静脈→心臓に「戻る」血液が通る血管

と定義されています。

肺と心臓での循環を基準に、その血液循環の順序を説明すると以下のようになります。

➀肺で酸素を取り込み、肺静脈から心臓へ運ばれます。
➁動脈を経由して心臓から全身に酸素が送られます。
➂各細胞で酸素が消費され、二酸化炭素が発生し、それが静脈を経由して心臓に戻ります。
➃その後、肺動脈で肺に送られ、呼気という形で肺から二酸化炭素を排出します。

基本的に「心臓のポンプ作用」は上記のように説明されますが、心臓の収縮力だけでは
全身の血液循環は賄いきれません。

そのために、必要なのが「骨格筋ポンプ作用」「呼吸ポンプ作用」になります。

これら2つのポンプ作用による血液循環は、人にとって必要不可欠で
「心臓のポンプ作用」を補う働きがあります。

このほかにも、栄養分の全身への分配や老廃物の運搬などにも動脈と静脈が使われています。

骨格筋ポンプ作用

基本的に動脈と比較して静脈は血圧が低くなっています。

立位や座位など重力に抗した姿勢をとっている時には、足の静脈は重力に逆らって、
心臓まで血液を押し上げる必要があります。

そのため静脈には心臓に血液を戻しやくするための「弁」が血管内部にあります。

この「弁」があることで筋収縮により圧迫を受けた静脈は、逆流せずに
心臓の方向に血液を押し出すことができます。

これが「骨格筋ポンプ作用」です。

筋肉が収縮すると深部静脈が圧迫され、弁の作用も加わり心臓に血液が戻りやすくなります。
また筋肉が弛緩すると深部静脈が拡張し、遠位から血液が流れ込みやすくなります。

足関節の底背屈など動的な運動を行うことで、深部静脈の圧迫と拡張が繰り返され、
筋肉がポンプの役割をして静脈血を心臓へ戻しやすくします。

足関節の底背屈を担うのは下腿三頭筋で、強力なポンプ作用があり「第二の心臓」ともいわれます。

 

呼吸ポンプ作用

ポンプ作用というのは骨格筋だけではなく、呼吸運動によっても生じます。

「呼吸ポンプ作用」の仕組みは2段階あり、吸気時に静脈へ戻る血液の量が増えます。
これには、横隔膜の収縮が関与します。

①横隔膜が収縮するでの物理的な変化
➁横隔膜が収縮することでの陰圧の変化

があります。

まず、①「横隔膜が収縮するでの物理的な変化」について説明します。
吸気時というのは横隔膜が収縮して下降し、腹腔内圧が高まります。
これにより、 腹腔内の静脈は圧迫され、血管内の血液は胸腔内の静脈に流れます。

次に➁「横隔膜が収縮することでの陰圧の変化」についてですが、上記の①のメカニズムに加えて発生します。胸腔内は呼気時よりも強い陰圧であるため、血液は胸腔内の静脈に流れ込みやすく静脈血は心臓に戻りやすくなります。

呼気時には横隔膜が弛緩することで腔内圧は低下し、胸腔内の陰圧も弱まり、
腹腔内から胸腔内への静脈血の移動も小さくなります。

これを「呼吸ポンプ作用」と言います。

運動時には吸気補助筋の収縮も加わり、胸腔内の陰圧が安静時よりも増大すれば、
呼吸ポンプ作用も働きやすくなると考えられます。

呼吸ポンプ作用は、骨格筋ポンプ作用とともに運動時に静脈還流量を増加させるための
重要な作用になります。

 

まとめ

今回は「骨格筋ポンプ作用と呼吸ポンプ作用」について解説させて頂きました。

筋ポンプ作用というと下腿三頭筋のポンプ作用がよく言われるのですが、
呼吸のポンプ作用も重要な働きがあるんですね。

覚えておくと、患者さんの指導や後輩の指導に役に立つと思います。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。