「記憶とは?」その意味・解釈について作業療法士が解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

今回は「記憶」について解説させていただきます。

臨床でも「記憶が低下している」などよく聞きます。
では質問です。「記憶って何?」と聞かれた時、あなたはどう答えますか?

中々、難しくて返答に困ることが多いですよね。
この記事を読めば、「記憶って何?」という疑問が解消されていると思います。

記憶の定義

記憶の定義は以下のようになっています。

簡単にいうと過去の経験を残しておいて、必要な時に思い出す能力のことです。

「何かを覚えて、後で思い出す」という事は普段の生活の中で、当たり前に行われています。
当たり前すぎて、説明してといわれてしまうと困ってしまいます。

実は、記憶にもメカニズムがあり、人がどうやって覚えて、どうやって思い出すのかという
メカニズムがあるのです。

以下に、そのメカニズムについて説明していこうと思います。

 

記憶には3つの段階がある

一般的に「記憶」には3つの段階があるといわれています。

まず、人が体験した出来事が記録されます。これを「記銘」と呼びます。
「記銘」された情報は頭の中に保管されており、この状態を「保持」と呼びます。

「保持」されていた情報は再び思いだされなければ、記憶されていたかどうかわかりません。
この「保持」されていた情報を再び思い出すことを「想起」と呼んでいます。
※「記銘」を「符号化」、「保持」を「貯蔵」、「想起」を「検索」という事もあります。

このように説明すると人の記憶は、スマホなどの動画で録画し、好きな時に再生したりする事や、
あるいは用事をメモ帳に書いて、後でそれを取り出して見る場合と同じような印象を受けます。

これらは、ある意味では似ているのですが、これまでの多くの研究から、
人の記憶はこのように単純なものではないことが明らかになってきました。

記憶の貯蔵庫モデル

人の記憶メカニズムに関しては様々な理論がありますが、その中で最も広く知られているのは
「貯蔵庫モデル」という考え方です。

人の記憶メカニズムが、容量と保持時間の異なる三つの貯蔵庫、
「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」からできているという考え方です。


この考え方で、人間の記憶メカニズムを機能面から見ると、「情報の保持できる時間の長さ」
「保持できる情報の量」の面で異なる複数の貯蔵庫が連結されているとされています。

人がものを見たり、聞いたりすることで、感覚器官から取り込んだ情報は、
まず「感覚記憶」(感覚レジスター)とよばれる貯蔵庫に短い時間だけ一時的に保管されます。

このときの視覚情報の保持時間は約1秒聴覚情報約2秒と言われています。

その中から選び出された情報は「短期記憶」とよばれる、次の貯蔵庫に送られます。

「短期記憶」で保持できる情報の量はわずかで、保持できる時間は30秒程度といわれています。

そして「短期記憶」の情報のうち、そのいくつかだけが、
「長期記憶」と呼ばれる最も長期間、かつ大量の情報を保持しておくことの
できる貯蔵庫に送られると考えられています。

そして、長期記憶はさらに「エピソード記憶」「意味記憶」「手続き記憶」などの
いくつかの種類に分類されます。

 

記憶の貯蔵庫モデルの欠点

「記憶の貯蔵庫モデル」を初めて提唱したのが、アトキンソンシフリンという人物です。
このモデルについては上記で説明してきましたが「短期記憶」の部分で色々な批判を受けました。

彼らが提唱した短期記憶のメカニズムは、短期記憶の情報を反復(リハーサル)しなければ、
短時間しか保持されないとしていました。

つまり「短期記憶」を単純な記憶の貯蔵庫の役割しか持たないとしていたんですね。

しかし、新しい外部からの情報に対して積極的に働きかけるという部分を軽視していることや、
リハーサルの「量」だけではなく「質」についてはさほど議論されていないことが問題に
あげられました。

それを補完する形で出てきたのが「作業記憶」という概念です。

↓これについては以下の記事を参考にしてみて下さい。
「短期記憶とは?」その意味・解釈について作業療法士が解説

 

まとめ

今回は「記憶とは何か?」について解説させていただきました。

まとめると、記憶には「記銘」「保持」「想起」という3つのプロセスがあるということ、
また「記憶の貯蔵庫モデル」という考え方では「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」という
プロセスがあるという事です。

なぜ、これらのプロセスを知る必要があるかというと、じつはMMSE、HDS-Rなどの
「神経心理学検査」の理解・解釈に必要だからなんです。

MMSE、HDS-Rの下位項目では、上記の該当する「記憶」の部分が出てくるはずです。

勤務先に臨床心理士がいればこういったところの解釈を
教えてくれると思うんですが、身障分野ではいない場合も多いはずです。

なので、自分で勉強する必要が出てくるんですね。

ちなみに「認知心理学」の分野です。

初めは、大変だなと思うんですが理解してくると結構面白いんですよね。
「ああ、こういう解釈をするんだ!」ってスッキリするんですよ。

アウトプットの一環として、これからも記事にしていこうと思います。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。