手を握るだけで記憶力が上がるってホント?




こんにちは。作業療法士のトアルです。

「手を握るだけで記憶力は上がる」

何ともセンセーショナルなタイトルですが、この話の元になった論文が
2013年の「プロスワン」という誌面に論文で掲載されました。

アメリカのモントクレア州立大学のプロッパー博士らの実験によって報告されたもので、
この記事のタイトル通り、記憶力を上げるには「手を拳にしてぎゅっと握る」だけで
効果があるというのです。

これは一体どういうことでしょうか。詳しく見てみましょう。

実験の内容

プロッパー博士らは、 51人の一般の参加者を募り、記憶テストを行いました。
実験の内容としては36個の単語を覚えてもらうテストです。

実験方法は目の前のモニターに次々と単語が提示されていき、
1つの単語の表示時間は5秒、全部で5秒×36個で180秒かけて表示されていきます。

表示された単語をすべて見終わった後で、覚えている単語を紙に書き出してもらいました。
その結果、正しく思い出せる単語数は平均8.6個

さて、ここからが本題です。ここで手を握ってもらいます。

手の握り方

今回のプロッパー博士らの実験では、ただ手を握るのではなく、
直径5㎝のゴム製のボールを思い切り握り締めるようにします。

ボールを握る時間は45秒間。終わったら15秒休み、さらにもう一度45秒間
できるだけ強くボールを握ってもらいます。これで1セットです。

このセットを単語を「覚える前」「書き出す前」にそれぞれ行ってもらいます。

ボールを握るという、とても簡単な作業なのですが、
この作業をした後には、正しく思い出せた単語の数が平均10.1個に増えました。

なんと18%も増加した計算になります。

手を握るだけならば、本当に「お手軽」です。
すぐにでも試してみたくなりますよね。

↓ゴムボール代わりに使えそうな代替品を見つけました。
橈骨遠位端術後の手指の浮腫予防にも使えそうです。

手を握るときの注意点

ただし、この方法には注意も必要です。
なぜなら手を握るという作業の効果が「右手」と「左手」で異なるからです。

覚える前には「右手」で握り、思い出す前には「左手」で握らなければ効果が無いそうです。
間違えると逆効果となり、何もしないときよりも成績が下がってしまいます。

「右→左」の順で握らなくてはならないのには理由があって、
脳半球の機能が左右で異なるからです。

HERA仮説について

20年ほど前に提唱された「HERA仮説」によれば、
左の前頭葉は「覚える」こと、右の前頭葉は「思い出す」ことに関与するそうです。

脳の身体支配は左右が交差します。リハビリ職なら何となく想像つきますよね。
右手を握る→左の前頭葉が、左手を握る→右側の前頭葉が活動します。

左の前頭葉が「記銘」に関与し右の前頭葉が「想起」に関与するので、
覚える前は「右手」で思い出す前は「左手」を握る必要があるんですね。

おわりに

もう一つ注意点があり、今回のプロッパー博士らの研究は「右利き」の人に限った話のようです。

「左利き」でも同じ実験を行っているようなのですが、結果については別の機会に公開する
と言っているようです。

「右利き」の人と「左利き」の人違いはどうなるのか結果に興味が湧きませんか?

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。