橈骨遠位端骨折の基礎知識(保存・手術療法)について解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

今回は「橈骨遠位端骨折についての基礎知識(保存・手術療法)」について解説します。

聞きなれない方に説明をすると、橈骨遠位端骨折とは「手首の骨折」の事です。

橈骨遠位端骨折は作業療法士であれば、かなりの頻度でみかけると思います。
高齢者の場合ですと、骨粗鬆症を基盤として転倒などの外力で発生する、
代表的な骨折としてあげられます。

では、橈骨の遠位端に、骨折が多いのはなぜでしょうか?

実はこれには解剖学的な理由があります。

橈骨の遠位骨幹端部から骨端部にかけて「皮質骨」という硬い骨が
急に薄くなるため骨折が多くなるのです。

受傷後にどのような治療を行うのか、どういったところに注意する必要があるのか
について解説させていただきます。

受傷後の治療

骨折の治療には3原則があります。
それぞれ「整復」「固定」「機能訓練」になります。

「整復」には、まず「徒手整復」が行われます。

しかし、徒手整復が困難であったり、整復後も整復位が保持できない場合に
「手術」(観血的整復)が行われます。

手術の適応には基準があります。それは「関節外骨折」「関節内骨折」かです。

骨折の部分が「関節内」にまで達している場合には、骨折治癒後の関節の変形による
「可動域制限」「痛みの原因」になるため手術の適応となります。

 

橈骨遠位端骨折の画像評価

骨折の徒手整復後にはX線画像でのパラメーター評価がなされます。

パラメーター評価とは「橈骨」「尺骨」の位置関係を示したもので
個人差はあるものの正常範囲が決まっています。

この範囲から逸脱した場合には「手術」の検討を考慮し、X線画像での状態を見て
「保存療法」か「手術」かを判断します。

急性期で勤務される作業療法士の方は術前・術後・週ごとの画像評価
ここを押さえることができればGOODですね。

 

橈骨遠位端骨折の治療方法


先に述べたように、画像での整復状態から治療方針を決定していきます。

保存療法

骨折部にズレが見られず安定している場合は「保存療法」となります。
骨折部の保護のためギプス固定となります。

手術療法

橈骨遠位端骨折の手術は一般的に3つあります。

・プレート固定
・経皮的ピンニング
・創外固定法

があります。

いずれの場合でも、上記の画像パラメーター内で整復します。
整復位での骨癒合を待つ期間に「患部以外の関節の拘縮」が生じる可能性があります。

リハビリではこれを予防するために「可動域訓練(ROM訓練)」を行います。

手術の方法により固定力の違いや骨が転移しないように動かしていい範囲・方向に制限がある
ため術後のリハビリのスケジュールも異なります。

プレート固定

金属のプレートを用いた手術方法です。

プレート固定は観血的に骨折部を展開するため、侵襲は大きくなりますが
確実に整復できるというメリットがあります。

また、掌側ロッキングプレートは強固な固定が可能であるため、
術後3日目~1週間のギプス固定後、早期からのリハビリでの可動域訓練が可能です。

経皮的ピンニング

金属の鋼線※1を用いた手術方法です。

経皮的ピンニングの手術適応は、徒手整復は可能でも、整復位の保持が困難な場合
に適応されます。

逆に適応しないのが「骨の粉砕が強いもの」「関節面に不整が残る場合」になります。

経皮的ピンニングの注意点は2つあります。

1つ目は皮膚から鋼線を骨に通すため、
術後の皮膚のトラブルや周囲を走行する神経や腱への干渉が生じる可能性があります。

2つ目は、鋼線の強度が強くはないため、無理な可動域訓練や負荷がかかる運動を
してしまうと鋼線が破損するケースもあります。

それを補うために他の2つの手術と比較してギプスでの外固定期間が長くなります。

ギプスで保護する範囲は「肘からMP関節」までで、
期間としては一般的に4~5週間の固定になるといわれています。

※1 鋼線はキルシュナー鋼線またはK-wireともいいます

創外固定法

創外固定の適応のケースは3つあります。

・整復保持が困難な場合
・骨の欠損があり固定が困難な場合
・開放骨折で感染の危険性があり、骨折部に固定材を使用できない場合

に適応となります。

経皮的ピンニングよりも強固な整復位の保持が可能で強度も強いため
早期からリハビリでの可動域訓練を開始することができます。

可動域訓練の開始期間については担当医への確認が必要になります。

創外固定の注意点として、ピンの刺入部での神経や腱の損傷やピンの刺入部での
感染も起こしやすいため、疼痛や神経症状、感染症状に注意が必要です。

作業療法士はこういった症状が出ていないかを毎回評価します。
もし、症状が出ていれば担当医・担当看護師に報告するようにしましょう。

 

まとめ

今回は「橈骨遠位端骨折の手術についての基礎知識(保存・手術療法)」を解説させて頂きました。



患者さんにとって骨折前まで普通にできていた生活ができなくなるという不便さは、
心身ともにかなりのストレスになります。

経験年数が上がるにつれて、骨折の固定期間に対しての意識というのが
鈍くなってきやすいと思うんです。

なぜかというと「安静度を守るのが当たり前」と感じてしまうから。

でも「〇〇週間ギプス固定」って相当長いんですよね。

安静度の上では守らなければならない事なんですが、
長期間動かしてはダメといわれると、気持ちが滅入るのもわかる気がします。

そんな時に、患者さんの話を丁寧に聴くことで心の中に溜まっていたものが吐き出されて

「話せて少し気持ちが楽になった」
「気持ちに整理がついた」

という話はよく耳にします。

機能訓練・ADL訓練も作業療法士として大事な仕事ですが、患者さんの今の想いを
聴けるようになると患者さんも気持ちが楽になれるのではないでしょうか?

また、急性期での作業療法士としての知識として重要なのは画像評価だと思います。
定期的な画像評価や、安静度の変更があった場合には必ず確認しておいたほうがいいです。

担当医とのディスカッションでは必要な知識ですよ。
知らなかった人はこれを機会に覚えてみましょう!

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この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。