こんにちは。作業療法士のトアルです。
今回は「注意機能とは何か」について解説させていただきます。
私は今の職場で整形疾患を主に見ており、高次脳機能障害を持っている
対象者の方と関わる機会がそんなにありません。
しかし、時々「交通外傷」や「転落」などの高エネルギー外傷で入院された方
と関わる機会があります。
びまん性軸索損傷疑いの方が多いのですが、CT・MRIでも画像診断が難しく、
画像上は構造的障害がないのに、機能障害があるという病態であり、
治療や予後予測が難しく、対応や作業療法士として評価に困る場合があります。
多くは注意障害が見られますが、注意機能の何が障害されているのかを
見極める必要があります。
そこで、今回は「注意機能」に関して勉強したことを、
私の備忘録のような形で記事として残したいと思います。
注意機能の定義
注意機能とは、以下のようになります。
まずは、このような定義があることを知っておきましょう。(川村,2012)
全般性注意と方向性注意
注意機能は認知機能の基盤になる能力で、日常的な活動の基盤となる部分です。
分類すると以下のような図になります。
その注意機能を大きく分類すると2つに分類できます。
1.全般性注意
2.方向性注意
の2つになります。
「全般性注意」は、ここからさらに3つに分類されますが、後ほど解説します。
「方向性注意」とは、空間での方向性を重視した注意のことであり、
臨床上よく遭遇する症状として「半側空間無視」があります。
右半球損傷後の左半側空間無視が有名です。
「覚度・注意の維持」「注意の選択」「注意の制御」とは?
先程、お話しました「全般性注意」ですが、さらに3つに分類されます。
1.覚度・注意の維持
2.注意の選択
3.注意の制御
の3つになります。
以下にそれぞれの項目について解説していきます。
覚度・注意の維持
「覚度・注意の維持」は、ある一定の時間において注意を維持する能力に関係しています。
この能力は「覚度」と「持続性注意」の2つに分けて考えた方が
理解がしやすいと思います。
【覚度とは?】
「覚度」とは『刺激に対する感度・反応性のこと』で「意識状態」に関係します。
刺激に対して反応しない「昏睡」の状態から、良好に反応可能な覚醒状態まで
様々なレベルがあります。
臨床ではよく「JCS」や「GCS」などで表します。
【持続性注意とは?】
「持続性注意」は、
『ある一定の時間経過の中で特定の対象に注意の強度を維持する能力』
のことを指しています。
臨床では注意機能を調べる検査でCAT(標準注意検査法)がありますが、
「ある課題を行うのにどれだけ注意時間が続くか」を調べる下位項目があります。
たくさんある注意機能の中で「最も単純で比較的年齢の影響を受けにくい」と
されています。(Berardi et al.,2001;Filley et al.,1994)
↓「注意の持続」は「脳幹網様体」が関わっています。詳しくはこちらの記事で。
注意の選択
「注意の選択」とは『多くの刺激の中から1つの刺激にのみ反応する能力』
のことです。
もう少し噛み砕いて言うと、
「世の中に溢れているたくさんの情報の中から1つのものを選び出す能力」
ってことになります。
そして、もう一つ重要なのが、
『ターゲットとする情報にのみ反応するには、その他の干渉となる刺激への反応を抑制する必要がある』
という能力です。
ネットでも何かを検索するときに自分に必要な情報を選び出しますよね。
そして必要ない情報は弾いているはずです。これを自動的に行う機能になります。
これもCAT(標準注意検査)に検査する項目があります。
つまり、「注意の選択」には2種類の要素が必要ということになります。
1つ目は『多くの中から1つのターゲットを選び出す能力』
2つ目は『1つのターゲット以外のその他の情報を抑制する能力』
ってことになります。
図で表すと下のようになります。
よく言われるのが「カクテルパーティー効果」です。
たくさんの会話や煌びやかなパーティー会場で自分が話している相手の声や
自分に関係のある話題のように特定の会話に注意を向けることができる現象
のことです。
有名な話なので一度は聞いた事があると思います。
「注意の選択」は注意機能の内でも、特に加齢変化に敏感で前頭葉機能の変化に
伴って低下しやすいとされています。(Barret al et.,1990;Plude et al.,1989)
注意の制御
続いて「注意の制御」についてですが、これは2つに分けることができます。
1つ目は「注意の転換」
2つ目は「分配性注意」
です。
1つ目の「注意の転換」とは
『ある対象に向けている注意を中断し、他のより重要な情報に注意を転換する能力』のことになります。
2つ目の「分配性注意」は
『2つ以上の刺激に同時に注意を向け、その量を分配する能力』になります。
「注意の転換」と「分配性注意」私は以下のイラストのように解釈しています。
CAT(標準注意検査)でもこれを検査する項目があります。
「分配性注意」は複数の課題を同時進行させる能力で
「ダブルタスク」や「デュアルタスク」※1とも呼ばれます。
高齢者では「分配性注意」を必要とする状況下では、
記憶についてのパフォーマンスが低下するという報告もあるそうです。
(Castel et al.,2003;Verhaeghen et al.,2003)
※1 最近の研究では人は1度に1つのことしか課題を遂行できず、瞬間的に
注意を切り替えているという説もあるそうです。
まとめ
今回は「注意機能とは何か」について記事にさせて頂きました。
冒頭でも上げましたがまとめると以下のような図になります。
途中で付け加えた分類も全て含めると下のような図になります。
注意機能って理解するのは結構大変です。呼び方や分類も文献によって違いますしね。
記事をまとめるのにも骨が折れました…。
私はこの記事に書いてある分類の方がしっくりきますし、理解がしやすかったです。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。