アルコール依存症の基礎知識(早期離脱症状・後期離脱症状)について解説




こんにちは。作業療法士のトアルです。

アルコール依存症の基礎知識(早期離脱症状と後期離脱症状)について
解説させていただきたいと思います。

長期のアルコール多飲歴がある方は、肝硬変・膵炎なども合併しているケースが多いです。

私の経験からいいますと、入院されて直ぐの時期はは電解質異常を伴っており、
意識状態がハッキリしないことが多いです。

正直、この時期はリハビリというよりは医学的治療が優先されます。

電解質の補正や集中的な治療が終わり、
医師から離床可能という安静度が確認できれば早期離床を目指します。

ですが、バイタルもバンバン変動するし意識障害もあるしで、
「離脱症状がなぜ起きているのか?」
「どういう方法で離床していけばいいのか?」
が分からず、新人の頃はおっかなびっくりしながら介入したのを覚えています。

アルコール依存症の概念と症状について

「アルコール」は依存型性薬物であり「精神依存」「身体依存」を持ち「耐性」を生じます。

まず「精神依存」が生じアルコールに対する強い渇望と薬物探索行動に出ます。
朝から酒の事を考え、仕事中であっても酒を買い行き飲み始めます。

一度飲み始めると抑制が効かずに泥酔するまで飲み、
目が覚めると再び飲酒するというパターンに落ち入ります。

対象者は酒をやめなければと考えますが、同時に飲酒したいという欲求もあり
理性と欲求の間を揺れ動きます。

周囲からは冷たい視線にさらされ、次第に強い孤独感を覚えるようになります。
そして、現実を回避するためにアルコールに頼るという悪循環を繰り返します。

アルコールの飲酒量は増加が増加していく過程を「耐性形成」といいます。
分かりやすく言うと、同じ量のアルコールでは酔えなくなり、
徐々に飲酒量が増えていってしまいます。

この段階になると、飲酒をやめる事により不快な離脱症状に悩まされることになります。
しかし、この症状は飲酒によりすぐに治まります。

そのため再度、飲酒してしまいます。

この状態のことを「身体依存」といいます。

 

離脱症状とはなにか?

アルコールは「身体依存」を形成し、急激に飲酒をストップすると「離脱症状」が生じます。

「離脱症状」は「早期離脱症状」「後期離脱症状」と2つに分けられます。

早期離脱症状とは

最後の飲酒から数時間で始まるとされ、1~2日の間にピークを迎えます。

自律神経症状として「発汗(寝汗)」「頻脈」「血圧上昇」などがみられ、
消化器症状(吐き気、食欲不振、下痢)などの症状が出現します。

次いで、手指や身体の振戦(アルコール振戦)が出現します。
場合によっては「けいれん発作」も出現します。

精神症状としては「不安」「焦燥感」「抑うつ」「不眠」などの症状に次いで、
軽度の意識混濁として、一過性の「幻覚」や「錯覚」「抑うつ状態」や「希死念慮」が
現れることも多いです。

 

後期離脱症状とは

後期離脱症状は早期離脱症候群に次いで起こり、
最後の飲酒から2~3日で出現し、4~5日でピークを迎えます。

自律神経系亢進症状(発熱、発汗、頻脈)とともに、
「意識障害」「幻覚」などを呈する「振戦せん妄」が出現し始めます。

「幻覚」は夜間や暗い部屋の中で増強し、明るい部屋では軽減するという特徴があり
時間帯により患者の状態をよく把握しなければいけません。

「振戦せん妄」が現れる時期は、「脱水」「低栄養状態」「電解質異常」「低血糖」などが生じ易く
最悪の場合には生命の危機に至ることもあります。

夜間帯に急変する場合が多く、セラピストが直接関わる場面は少ないですが、
不穏・粗暴行為がみられるなど精神運動亢進状態が見られることもあります。

それを落ち着けるため、向精神薬を投薬される場合もあります。

もしリハビリに介入する際は、夜間の状態は看護師からしっかりと情報収集するようにしましょう。

まとめ

今回は「アルコール依存症の基礎知識(早期離脱症状と後期離脱症状)」
について記事をまとめさせて頂きました。

新人の頃はかなりびっくりしますが、医師からの安静度の確認と、
フィジカルアセスメントを行いながら離床を行えば大丈夫だとは思います。

その他の点で注意してほしいのは、不穏からくる粗暴な行為です。

対象者もやりたくてやっているわけではないはずなので、
自分の身も守りながら離床しましょう。
一人で離床するのが不安であれば、必ず誰かを呼ぶようにした方が
いいと思います。特に離脱を過ぎてすぐのころは状態が変化しやすい時期
なので注意が必要です。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。