FABの評価・理解・解釈について作業療法士が解説!




こんにちは。作業療法士のトアルです。

今回は臨床でも良く使用される「FAB」について解説をしたいと思います。

FABは、Duboisら(2000)によって前頭葉機能を評価する目的で開発された
検査方法です。英語での正式な名称は” Frontal assessment battery”といいます。

短時間で簡便に前頭葉機能を評価できます。

6つの項目で構成されており、概要としては以下のようになります。

それでは以下に詳細を説明していこうと思います。

FABのカットオフ値

FABは18点満点となっています。

FABのカットオフ値は明確には既定されていないようですが、
高木ら(2002)らによれば、健常者群のFABの得点が13.7±2.3となっており
16点以上が健常群とされている事が多いようです。

そのため、15点以下で前頭葉機能低下が疑われ、10点以下で前頭葉型認知症の可能性
高くなると言われています。

 

FABの検査の目的

FABの検査の目的として以下の4つが上げられます。

脳画像が撮られている場合、ある程度の予測を元に前頭葉機能のどの機能が低下しているかを
判別していきますが、脳画像が撮られていない場合も他の認知機能検査と併用しながら
慎重に精査していく必要があります。

検査に必要なものは以下の3つです。
・FAB検査用紙
・筆記用具
・ストップウォッチ

1. 概念化 (類似性)

2または3つの言葉から、言語による「概念操作」の能力を検査する項目です。

初めに練習を行い、次に本番を行っていきます。

【練習】
練習での教示方法は以下のようになっています。

正答は「乗り物」「交通機関」になります。

正答・誤答に関わらず本番へ進みます。
答えに戸惑った場合も正解を教えて本番に進みます。

本番では被験者が複数回答した中に正答が含まれていれば正答とします。
正答がでなくても、ヒントをあたえず先に進んでいきます。

15秒程度何も反応がない場合は次の質問に進みます。

採点方法は検者が被験者の答えた言葉を記録し、以下のように得点を付けていきます。

 

2. 知的柔軟性 (語の流暢性)

自発的に言葉を作り出すことができるかを検査する項目です。

教示方法としては以下のようになります。

もし質問を勘違いしている場合は

と再度伝えます。

最初の5秒間黙っている時は、例えば“かえる”などのヒントを出します。

開始から10秒間黙っている時は

と回答を促します。

その後、無言の状態が続いても声をかけずに(開始から)60秒間は待ちます。

・制限時間は60秒で時間内に10語言えたら終了とします。
※注意点:ストップウォッチを使用する。

採点基準は以下のようになります。
・同じ単語のくり返しは1語とカウントします。
・名詞・形容詞・副詞・動詞のいずれも可能です。
※注意点:ただし人の名前・地名などはいけません。

 

3. 行動プログラム (運動プログラミング)

高次運動野の機能を検査する項目です。検者の動きをみて対象者が模倣できるかを確認します。

被験者の利き手を聞き、右利きの場合は、検者は左手で
被験者と検者が『鏡』の状態になるようにします。

その後以下の指示➀~➂を行います。
※注意点:下記は被験者が右利きの場合を想定。

●指示①:「私がやることをよく見ていてください」

以上の連続動作を1組とし、それを3回くり返します。

●指示②:

被験者と一緒に、(1)~(3)の連続動作を3回くり返します。
※注意点:指示②ができない場合でも指示③に進める。

●指示③:

途中でやめた人には「もう少し続けてください」と連続動作をくり返すように促します。
もし途中で間違えた場合は終了します。

 

4. 葛藤指示 (干渉刺激に対する敏感性)

提示されたルールや規則に従った運動の発現は、前頭葉の高次運動野と前頭前野内側面が
司どっているとされています。

この課題は、検者が指を何回叩いたかという短期記憶も必要になり前頭葉機能全般を検査します。

●指示①:

被験者が指示を理解したかどうか確認して練習します。
※注意点:検者が指を動かしてからは教示をくり返さない。


※注意点:指示①ができなかったら指示②には進まずに0点とします。

●指示②:

被験者が指示を理解したかどうか確認して練習します。
※注意点:指を動かしてからは教示をくり返さない。


本番前に、約束の確認を求められても「思った通りでいいですよ」と答え、
約束の確認はしないようにします。
※注意点:指示②ができなかったら指示③には進まずに0点とします。

【本番】
●指示③:

検者は10回指でタップし、1回ごとに被験者に続けて指でタップさせます。
※注意点:途中で間違えてもやり直させず、最後まで課題を終わらせる。

【課題】(10個の連続動作)

上の課題に対して、以下の得点基準から点数を求めていきます。

 

5. GO/No‐Go (抑制コントロール)

検査項目4の「葛藤指示」で必要となる前頭葉の高次運動野と前頭前野内側面、短期記憶に加えて、
行動を抑制する機能をもつ両側半球の前頭前野を検査する項目になります。

●指示① :

被験者が指示を理解したかどうか確認して練習します。
※注意点:検者が指を動かしてからは教示をくり返さない。

【練習】

※注意点:指示①ができなかったら指示②には進まずに0点とします。

●指示② :

被験者が指示を理解したかどうか確認して練習します。
※注意点:指を動かしてからは教示をくり返さない。

【練習】

本番前に、約束の確認を求められても「思った通りでいいですよ」と答え、
約束の確認はしないようにします。
※注意点:指示②ができなかったら指示③には進まずに0点とします。

【本番】
●指示③ :

検者は10回指でタップし、1回ごとに被験者に続けて指でタップさせます。
※注意点:途中で間違えてもやり直させず、最後まで課題を終わらせる。

【課題】(10回の連続動作)

上の課題に対して、以下の得点基準から点数を求めていきます。

 

6. 把握行動 (環境に対する非影響性)

行動の抑制機能を検査する項目で、両側半球の前頭前野機能を反映させるものです。

●指示①:

●指示②:

検者は、提示➀・➁の後に目を合わせたり、何も言わずに、
自分の両手を被験者の手のそばによせ、手のひらを合わせます。

そして、手を握らないでじっとしていられるか1~2秒間観察します。

もし、握ってしまった場合には、「私の手を握らないでください」と、
もう一度言ってから同じ動作をくり返します。

上の課題に対して、以下の得点基準から点数を求めていきます。

 

まとめ

私は臨床ではMMSEと併用して使います。
MMSEでの点数が健常でもFABの点数が低下している事が結構あります。

神経生理学検査全般に言えることですが、検査結果から得られた評価を元に、
日常生活でのケアの方法や本人や介助者に対するアドバイスができるかが
作業療法士の仕事だと思います。

以前の記事で紹介しているのもあるので参考にしてみて下さい。

コース立方体組み合わせテストについて
レーブン色彩マトリックス検査について
MMSEについて

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。