Hb(ヘモグロビン)異常値のときにリハビリ職が知るべきリスク管理




こんにちは。作業療法士のトアルです。

皆さんは、臨床で患者さんの「Hb」(ヘモグロビン)が異常値を示しているとき、
どういうリスク管理をしているでしょうか?

今回は「Hbが異常値となっている場合にセラピストが介入前に知っておくべきこと」
について記事にしたいと思います。

Hb(ヘモグロビン)とは?

まずは「Hb(ヘモグロビン)とは何か?」について解説します。

Hb(ヘモグロビン)は赤血球中のタンパク質の事で、「ヘム」という色素と「グロビン」というタンパク質からできています。「ヘモグロビン」は赤血球中の大部分を占めている色素で血液が赤いのもこの色素の影響があるためです。

「ヘム」の中央には「鉄」が含まれており、貧血のときには「鉄」が失われてしまいます。
貧血のときに鉄分を多くとるように言われるのはこのためです。

機能としては酸素と結合して全身に酸素を送り、全身に酸素を送った後で不要になった二酸化炭素を受け取ります。その後、肺まで二酸化炭素を運んできて放出し、再び酸素と結びついて各組織に運ぶという重要な働きを担っています。

基準値

・男性: 13.7~16.8g/dl
・女性: 11.6~14.8g/dl
※病院ごとに異なる場合もあります。ご了承ください。

この値の増減で症状に変化が現れます。

 

Hbが高い場合のリハビリ介入の可否

 

一般的にHbが高値でリハビリが禁忌になる事はないようですが、
ひょっとすると「脱水」などが隠れている可能性もあるため注意が必要です。

BMIが低い低栄養の高齢者(サルコペニア)の場合によく見られます。

安易に大丈夫だと過信せず、患者さんの主訴の確認やフィジカルアセスメントを行います。

 

Hbが高い場合では何が起きているか?

Hbが高値の場合では以下のような症状がでます。

・頭痛
・めまい
・のぼせ
・耳鳴り
・高血圧

ベッドサイドでこのような自覚症状が出ている場合は、
生検値の異常とフィジカルアセスメントが一致しているため、注意が必要です。

リハビリ介入前に医師、看護師への相談は行うようにしてください。

 

Hbが高値の場合のリスク管理

Hbが増加する要因としては、大まかに2つ考えられます。

1.「体水分量の低下」により相対的にHbが増加する。
2.「低酸素状態」に対する赤血球の産生の増加によりHbが増加する。

1.「体水分量の低下」でリハビリ時に注意したいこと

この現象は、体の水分が減ってしまった事で見かけ上Hbが上昇したように見えます。
これを「相対的多血」といいます。

体水分の減少とは「脱水状態」の事になります。
脱水状態を作り出す「下痢」「嘔吐」がないか確認しましょう。

また、体液が減少しているため循環血液量が低下し「頻脈」となる場合があります。
心拍数の確認をするようにしましょう。

2.「低酸素状態が原因」でリハビリ時に注意したいこと

この場合、基礎疾患にCOPDや先天性心疾患がないか確認します。
代償的に赤血球が産生され、それが検査値に反映されている可能性があります。

私自身は臨床で見たことは無いのですが、上記が原因でHbが高値になるケースもあるそうです。

また、Hb高値のときは血液中の粘度が上がります。

体液の減少や、赤血球産生過多などで血液中の溶質濃度が高くなるのが
その理由だと考えられています。

この場合、凝固系因子に影響が出る場合もあるので、それらの値を確認する必要もあります。

Hbが低いとき何が起きているか?

Hbの低下ではリハビリ時に気を付けなければならない事が多くあります。

まず、リハビリでの初回介入時は医師からの安静度を確認してください。

また、入院経過中にHbの値が徐々に低下している場合は『離床を行うべきか』を医師に相談することが必要になってきます。

また、輸血が必要な場合はリハビリ介入を中断し医師の指示を仰ぎます。

Hb低下のときには以下のような症状が出ます。

・めまい
・息切れ(呼吸困難感)
・倦怠感
・頻脈
・易疲労性
・手足の冷感(末梢冷感)
・チアノーゼ

原因として以下の3つが考えられます。

1.急性の出血でHbが低下する。
2.骨髄での産生低下によりHbが減少する。
3.赤血球の破壊が亢進するためHbが減少する。

1.については、手術による出血、消化管などの出血、月経過多も考えられます。

2.や3.については、悪性腫瘍や血液系の疾患、腎性貧血などが考えられるため、
基礎疾患の確認が必要になってきます。

また、鉄分の摂取不足や吸収不足による鉄欠乏、低栄養も要因としては考えられます。

 

Hbが低いときのリハビリでのリスク管理

上記の原因でHbが低下すると、酸素の運搬能力が低下してしまいます。
リハビリで確認すべきアセスメントは、

・SPO2のモニタリング
・息切れ(呼吸困難感)
・易疲労性
・チアノーゼ
・頻脈(安静時・労作時)
・手足の冷感(末梢冷感)

これらの症状が出現していないか確認が必要になってきます。

「頻脈」については血中の酸素濃度が低下するため、
心拍数の増加で代償していることが考えられます。

急性期だと内部障害術後の方も担当する機会は多いです。
そのため術後の出血のリスクもに対しては注意を払う必要があります。

離床に関してはHbが低下していないか、介入前に毎日確認するようにします。

 

まとめ

酸素を組織に届けるHbの値が低下すると様々な問題が生じてきます。

私の経験上、以下のような3つのポイントに気を付けるべきではないかと思います。

離床にあたっては、本人の主訴の確認やフィジカルアセスメントを
しっかり行う必要があります。

今回は、「Hb」についてのリハビリ介入ポイントについて説明させていただきました。

皆さまのご参考にしていただければ幸いです。